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北海道アングラーズペンクラブ 【2010年記事一覧】


 尖閣諸島沖での海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件によるすったもんだは、改めて日本と中国の関係が複雑に絡み合っていることを浮き彫りにした。それはさておき、ちょうどその頃、知り合いの旅行業者から北海道観光に来た中国人20人ほどに釣りを体験させたいので相談したいという連絡があった。比較的札幌から近い日本海方面で、水深100メートルほどの深場での船釣りをさせたいが、電動リールなどの釣り具を貸してほしいというものだった。仕事で釣り具のレンタルも行っているので数人分は用意できるが、20人分はとても無理だ。札幌市内でレンタルを行っている釣具店にもあたってみたが返事は同様だった。というわけで業者も困ってしまった。その後、業者と会う機会があったので、先日の件はどうなったのか尋ねると、無事行うことができたという。事情を聞くと、なんと20人分の新品のレンタル釣り具を装備した船があったのだという。釣り愛好者なら、それがどんなにお金がかかることか分かると思う。電動リールは釣り具の中でも高価な物の一つだ。深場用なら一般的なものでも5万円前後はする。このほか釣り糸、竿、竿受け、リール用のバッテリーも必要だ。アバウトだが1セットおよそ10万円。総額で200万円の投資である。以前、水産関係者の知り合いから「海岸沿いを車で走ると分かるが、家が立派なのはオホーツク、太平洋、日本海の順」。要するに収入の多い順だ。今回、中国人たちが訪れた地域も寒村という言葉がよく似合う。日本海側に、そんなすごい装備を整えた遊漁船があるなんて聞いたことがない。旅行業者が言葉を続けた。「どうやらナマコで大もうけしたらしいんですよ」。ナマコといえば、中国からの引き合いで高騰し、今や高嶺の花である。これを枯渇寸前になるほど獲りまくったという。で、しばらくはナマコが獲れないので、今度は釣りで…ということらしい。業者によると中国人は体験型観光が好きで最近、釣りをしたいという中国人客が増えているという。冬場の天ぷら付き、ワカサギ釣りなどもきっと喜ぶに違いない。

輸出先、輸入先ともに
中国がトップ
 財務省の貿易統計によると、今年上半期の釣り竿、釣り針などの釣り用品輸出入通関実績は、輸出、輸入ともに中国がトップである。数字では、輸出が約16億円、輸入が約86億円だ。とくに輸入では2位のベトナムが約12億円だからダントツである。これは、何を意味しているかというと、簡単に言えば日本から釣り具の半製品などを輸出して中国で製品化してもらい、OEM供給といった形で輸入しているメーカーや問屋などがいかに多いかということである。ある釣り具メーカーの社長は、「中国と関係のないメーカーは少ないのでは」というほどだ。釣りの仕掛けなどはほとんどが手作りである。人件費が安い中国なくしては、日本の釣り業界は立ち行かないのである。
 しかし、今回の事件は釣り業界の関係者にも「中国との間には何が起きるか分からない」という危機意識を改めて自覚させた。人民元の切り上げや賃金の上昇による影響への不安もある。メーカー最大手のグローブライド(旧ダイワ精工)が、東アジアでの生産拠点の中心を中国からベトナムへとシフトさせたのも、そうした事情があるからだ。輸入額ではベトナムと大差ない形で、マレーシア、インドネシア、タイも続いている。釣りというレジャーは平和と豊かさの象徴でもある。戦争が起きたり、混乱、疲弊の状態に陥っていれば釣りどころではない。中国はもとより、他の東アジア諸国とも仲良くして発展してほしいものだ。
 

癌の手術で声帯がないのにラジオの釣り番組に出演
釣りと魚のよもやま話(34)ヤマミチ・マサカツ
(ウイングサッポロ2010年11月号掲載に一部加筆)


 (財)日本釣振興会北海道地区支部の事務局担当副支部長として、今年の4月から札幌市豊平区のラジオ局である「FMアップル」で、釣りの情報番組に出演している。放送時間は毎週月曜日の午前10時半から30分間。番組名は「山ちゃんと洋子の釣れづれトーク」だ。「山ちゃん」とは私で、「洋子」は番組でお相手をしてくだっているパーソナリティーの森本洋子さんである。ミニFM局なので電波が届く範囲は地元豊平区が中心だが、インターネットでも視聴できる。同局のホームページから無料のソフトをダウンロードすればどこでも聴ける。小さい画面ながら放送風景も映る。
 私は喉頭癌になり、5年ほど前に手術で声帯をとってしまった。これまでの常識なら声帯がない状態で声を発するには、器具に頼るか特殊な発声法を身に付けるしかない。しかし私の場合、北海道在住者では恐らく初めてという「喉頭亜全摘手術」を受けたことにより、少し音質は良くないものの、ほとんど生活に支障がないレベルで声が出るのだ。いわゆる全摘手術の場合は呼吸のため喉に穴を開けるが、それもない。食事も普通にできる。しかも、再発率が低いというのが特徴だ。もっとも、この手術は癌のレベルによっては受けられない場合もある。私の主治医によると、日本では年間に毎年3000人ほどが喉頭癌になるという。簡単に言えば、症状が軽い場合は放射線と抗癌剤治療で、重い場合は全摘手術。亜全摘手術はその中間だ。以前なら全摘となっていた患者のうち、300人ぐらいは亜全摘手術によって救えるというのが、主治医の見解だ。主治医とは、神奈川県の相模原市にある北里大学病院耳鼻咽喉科の中山明仁助教授で、この手術では日本の権威といわれている。1997年に同病院で1例目の手術が行われた。現在までに70例以上実施し、日本では最多だ。全国では10施設ほどで行われ、北海道大学病院でも私の手術を見に来た先生方により、その後実施された。私の手術の話を知り、北海道から北里大を訪ねて手術受けたという人が、共通の知人を通じて連絡してきた時には驚いた。
 

釣り振興と手術の普及に
FMアップルが協力
 
 昨年、たまたまFMアップルの営業担当の女性と知り合い、手術の普及のためにラジオで実際に声を聴いてもらう機会がないものかと話したのが、番組が始まるきっかけとなった。番組内容は、最新の釣り物の情報や日本釣振興会の釣り教室や釣り大会のお知らせなどだ。たまに手術の話もしている。釣り場には、週末に釣り人が多く訪れる関係で、新聞などのマスコミによる情報提供は、編集作業もあって普通は早くても翌週の後半だ。月曜日の午前中の釣り番組は、そういう意味では“最もはやい”釣り情報番組ということになる。まさにラジオの強みだ。先日、主治医の要望により番組をCDに録音して提供し喜ばれた。耳鼻咽喉学会などでの話のタネになるそうだ。先日、病院を訪れた時は、録音するから1から10まで英語で発音してほしいと言われ、面食らった。最近は外国での発表の機会もあるからだそうだ。この手術を受けてラジオ番組を持っているのは私ぐらいかもしれない。釣り振興と手術の普及両面で、ご協力いただいているFMアップルの好意には大変感謝している。
 

 北海道には北海道釣り団体連合会という組織があり、我々(財)日本釣振興会北海道地区支部など4つの釣り団体が加盟している。そのうちの1つで60年近い歴史がある北海道釣魚連盟(道釣連=どうちょうれん)はユニークな活動を行っていることで知られている。柔道や剣道などと同様に、釣りに段位制度を導入しているのだ。
 釣りには江戸時代に武士道に通じるものがあるとして、山形の庄内藩では藩主の酒井公が磯釣りを奨励した。魚を敵、竿を刀に見立て、釣り場は魚との真剣勝負の場であった。そして、敵の首をとった証が魚拓だそうだ。庄内は魚拓の発祥の地でもある。城下町の鶴岡から海岸まで、徒歩で往復20キロ以上の山越えの道を、釣り具などの装備を担いで行くわけだから、実際足腰の鍛錬にもなった。そのためか戊辰戦争での庄内藩は特に足腰の粘りを利用してのゲリラ戦を得意とし、官軍を大いに悩ませたという。
 
重いリュックを背負い
徹夜で釣り歩くハードさ
 
 というわけで、他の武道同様、釣りに段位制度があっても不思議ではないのである。ただ北海道で言う磯釣りと庄内などでいう磯釣りとでは、釣り方がちょっと違う。あちらではウキを使って餌が付いたハリを水中に漂わせて釣るウキ釣りである。北海道でいう磯釣りはウキを使わず、一番下に大きなオモリを付けて海中に投げ込み、餌を底に沈めて釣る。投げ釣りとか、ぶっ込み釣りともいう。釣り場は岩場などのいわゆる磯が中心で港での釣りは行わない。
 道釣連には全道各地に支部がある。各支部で予選となる釣り大会が行われ、上位に入ると年に4、5回開催される全道大会に参加できる。全道大会には毎回200名ほどが参加し、団体部門と個人部門で競う。団体部門は1チームが6人編成で、各選手の成績の合計点で順位を決める。チームと支部の名誉がかかっている団体部門があるので選手は最後まで気が抜けない。 大型バスに乗って、夜中に体育館などの会場に集合して開会式を行う。選手宣誓なんかもちゃんとやる。再びバスに乗り込み、秋だと日高沿岸などの海岸沿いのポイントで降り、後は徒歩である。頭にキャップライトを付け、重さが20~30キロもあるようなリュックを背負い、徹夜で魚を求めて1時間以上歩くこともざらという。リュックには餌となるイカゴロが200本も入っていたりするのだ。天気が悪いくらいで大会が中止になるようなことはまずない。台風のような風波の時に釣りをしていて地元の漁師があきれることもある。「海で死ぬなら本望だ」というような猛者が多いが、やはりライフジャケットは大切と大会での着用義務付けに尽力した人物が、長く道釣連の最高幹部として組織をまとめ、北海道釣り団体連合会の会長も務めた長嶋乾蔵さんである。段位は大会成績など釣りの技量はもちろん、人格や組織への貢献度などにより審査会が認定するのだが、1000人ほどもいる会員の中でただ1人最高位の十段を与えられたのが長嶋さんだ。この長嶋さんが2010年7月にえりもの釣り場で突然倒れ、帰らぬ人となった。発見された時も竿を握りしめたままだったという。享年71歳。ご冥福をお祈りしたい。

平成15年の道釣連創立50記念釣り大会で大物を釣り、表彰される長嶋乾蔵さん






釣り人への締め付けについて
釣りと魚のよもやま話(32)ヤマミチ・マサカツ
(ウイングサッポロ2010年9月号掲載に一部加筆)


 雑誌掲載用にこの原稿を書いていた7月の中旬には、道東や道北各地でカラフトマスが釣れ始めていた。お盆にはピークを迎え、以後はサケ釣りへとシフトしていった。カラフトマスは残念ながら総じてパッとしなかった。サケは一昨年が大不漁で、昨年はそれを上回る不漁との予想が出され、関係者は戦々恐々となった。採卵用のサケを確保するために釣り人に河口周辺での釣りを自粛するよう、NHKがテレビで呼びかける騒ぎになった。釣り人が竿を出していると、監視の漁船に取り囲まれて睨まれたという話も聞いた。出鼻をくじかれた釣り業界は、「例年同時期より売り上げが2割ほどダウンした」と嘆いた。
 ところが、予想は見事にはずれ、まずまずの漁となった。とんだお騒がせだが、予測が外れることが濃厚となった時期に「密かに今年の秋サケ資源予測がはずれることを祈っています。なぜなら、予測がはずれることにより、予測精度をさらに高めるための要望と機会が与えられるからです。」と関係者の一人が居直りとも受け取れるような一文をしたためているのを見たときは少し驚いた。
 サケの来遊予想はなかなか難しいらしいが、どうやらこんな乏しい予算で正確な予測などやってられるかということが言いたいらしい。 というわけで、またはずれるかもしれない?今年の総来遊量の予想は昨年実績比4%増の4996万尾で、資源は回復基調とのことだ。予想どおりであることを願いたい。と、雑誌には書いたのだが…。
 その後、この原稿を釣り友に転載する時期になって、今シーズンのサケの水揚げについてもほぼ結論が出た。全体としては昨年の8割程度ということだ。猛暑による高水温の影響ということだが、またもや予測は外れてしまいそうだ。当初、冷夏と予測した気象関係者もいい加減なものだと思った人は多いことだろう。もっともそれだけこうした予測は難しいのだろうが、予測によってビジネスの行方を左右される人も多いのだから、予測のために必要な予算を割いた上で、外れたら冬のボーナスは半分といった成果主義を導入するのもいいかもなどといったら酷だろうか。
 

政治家の圧力で看板立てた?
 

 今度はサクラマス(ヤマベ)の話。今年の夏、余市川に「余市川水系遊魚啓発看板」なるものが、中流から上流にかけて21箇所に立てられた。看板の中身は、「釣り人の皆様へ!!余市川水系は、さくらます(やまべ)の幼稚魚を放流している資源増殖河川です。ルール&マナーを守って釣りをしましょう!!」という文言と禁漁期間などが書いてある。幼稚魚を放流している川は余市川に限らずたくさんあるし、川でのヤマベ釣りにルールがあるのは釣り人なら皆が知っていることだ。いわば当たり前のことを、なんで今さら看板を作ってまで知らせなければならないのか。事情はこうだ。地元に釣り人が大嫌いな人がいて政治家を使って毎年、なんとか締め出せないかと圧力をかけてくるものだから仕方なく立てることになったのがこの看板ということらしい。中身はともかく看板があれば威圧する効果はあるかもしれない。釣り人には、「何か悪いことでもしているみたいで不愉快だ」という人や「逆効果かも」という人もいる。
 後志沖でのサクラマスの船釣りはライセンス制になっていて、現行の実施期間の3月1日~5月15日を、1月、2月にも拡大しようとの動きがある。それもこれも、いくら放流しても後志沖のサクラマス資源が増えないからだが、今シーズンの恵山や椴法華など道南のサクラマス漁は絶好調だった。道南の海域は全道のサクラマスが越冬のために集まってくるとされる。そこで一網打尽にすれば、後志まで回らないのは当然だ。漁で獲っている量ははんぱじゃないんだから、釣り人をいじめる前に産地間での漁獲を調整するなどの取り組みをすべきではと、ある会議で言ったら、「そういう発言をもっと中央の会議でして」と、出席していた水産関係者から言われた。これは釣り人サイドの私が言うべきことなのか?後志沖のサクラマスが増えないのは、川が砂防ダムだらけで、野生由来が8割とされるサクラマスが育つ環境にないからとも言われる。そうした本質的な議論をないがしろにして釣り人の締め付けばかりをやろうとしているように見えるのだが…。予算が厳しいのに看板代だって馬鹿にならないだろう。そういえば、あのマツカワにしても、釣り人が釣れる確立がかなり低いという調査結果が出ているにもかかわらず、道の関係機関も含め、規制内容を各種印刷物、マスコミへの広告、広告入りティッシュぺーパーなどで告知している。まさに予算の無駄づかいである。ひょっとしたら釣り人が一年間に釣るマツカワよりも、その予算で買えるマツカワの方が多いのではなかろうか。そんな予算があるなら消費者にタダで配って、消費拡大でもすべきだろう。
 さてその後、後志沖のライセンス制の前倒しについては会議が重ねられ、漁業関係者からさえも、そんな真冬の時期にはなかなか船も出せないし、そんなに影響はないのではないかという意見もあったにもかかわらず、資源増大に向けてとにかく何か仕事をしなければならない?という人たちの熱意もあって、まずは実態はどうなのかというアンケートを実施することになった。雑誌にはこの辺のことは書いてはいないが掲載後、会議の関係者の一人から、不満そうなメールも届いた。水産資源を守っていかなければならないのは当然だが、釣り人に対して規制することしか方策を思いつかない人たちのいいなりになっていては、どんどん釣りの世界が窮屈になっていくことも歴史が示している。釣り人も言うべきことは言わなければだめである。疑問を感じたら声を上げることでコミュニケーションを深め、関係者との信頼関係を築いていくことが大切なのではと考える。だまっていたら“了解”ということなのだということを肝に銘ずるべきだろう。規制が決まってしまってから、後でぶつぶついっても遅いのだ。肝心の釣具店などの釣り業界はとくにこの辺の傾向が強い。釣りを商売しているにもかかわらず、こうしたもの言わぬ態度が規制サイドからの侮りを招き、結果として釣り人の足を引っ張っていることを強く自覚して、もっと結束すべきだろう。


 日本最古の歴史書である「古事記」(奈良時代・712年)には、ワニ、スズキ、タイ、アユ・シビの5種類の魚の名前が登場する。これが記録に残る日本最古の魚の和名といわれる。このうちワニはサメのことである。タイはマダイで古事記での表記は「赤海鯽魚」だそうだ。「魚の分類の図鑑」(上野輝禰・坂本一男著、東海大学出版会)によれば、「鯽」はフナの意味で、「海にすむ赤いフナのような魚」ということである。だとするとフナの方が和名としてはさらに古そうだ。釣りの世界には「フナに始まりフナに終わる」という言葉があるが、魚名としても原点なのかも知れない。シビはマグロのこと。スズキとアユは今もそのままだ。
 以前にも紹介した「虫の名、貝の名、魚の名」(東海大学出版会)の著者の一人、瀬能宏さんによると、日本語による魚の“本名”というべき標準和名は、1913年に日本産の魚類をを網羅したはじめての目録「日本産魚類目録(実名は英文)」で選定された1230種の魚名が基礎という。著者の一人で日本の魚類分類学の祖といわれる東京帝国大学の田中茂穂教授は、「海水魚では東京魚市場で使用されている名称をまず採用し、それがないものについては地方名がある場合はそれを、地方名もない場合は新たに命名したと述べている。淡水魚については、種類が多い琵琶湖沿岸での呼称をまず採用し、ない場合は東京またはその付近での名称、それもない場合は海水魚と同様に新たに命名したという」。
 その後は新種などが追加され、2000年に刊行された「日本産魚類検索」(中坊徹次編)には3863種が収録されているのだが、標準和名の決め方については、規約やルールなどはとくにないのだという。では、だれがどこで命名するのであろう。簡単にいえば、新種が発見され学術雑誌などに論文として発表される際に、研究者が新標準和名として提唱するケースが多いようだ。また、新種ではなくても、外国産の魚が日本に輸入されるにあたり、標準和名があった方が便利な場合もある。ルールがないとはいえ、その際には万人に受け入れられるよう配慮が必要とされる。
 

日本魚類学会が標準和名検討委員会を設置
 

 というのも、魚などの生物の名に、「メクラ…」、「セムシ…」、「イザリ…」などの差別用語や、「ハゲ…」、「チビ…」、「バカ…」などときに不快感を与える言葉が使われることが問題視されるようになったからだ。水族館や博物館など展示する際も、こうした名称は都合が悪い。フグのように毒がある魚に複数の名称が用いられるのも事故の元だ。また、ヤマメとサクラマス、エゾイワナとアメマス、ヒメマス(チップ)とベニザケ、サケとシロザケ、ブラックバスとオオクチバスのように、同じ魚なのに二つの名称が標準和名として通用してしまっているケースもある。絶滅危惧種に複数の名称があるケースでは、保護の観点からも混乱が生じる可能性があるという。こうした諸問題に対処するため日本魚類学会の中に標準和名検討委員会(瀬能宏委員長)が設置され、命名のルールづくりなどについて議論を進めている。
 瀬能さんによると、魚の命名の際に望ましいとされるポイントは3つ。①標準和名は分類単位を区別するために命名されるわけだから、できるかぎりその生物の特徴を端的に表した名称であること②読みやすく、長すぎず、日本語として美しく、格調高い名称③差別的感覚や不快感を与えるなど、不適切な名称は避ける、である。
 

  前回では、坂本龍馬のように、ちょんまげのない武士などの髪型の一つである「総髪」が、ソウハチというカレイの仲間の名の由来となったなどという話を書いた。まことに、魚の名についての興味はつきない。
 ソイの仲間のヤナギノマイは、漢字では柳の舞などと書く。経験では、水深100メートルくらいのところでよく釣れた。一度に何匹も釣れるときがあるので群れでいるようだ。ウミシダやヤギ類などを漁師が柳と呼び、その前辺りに群れている魚だから、「柳の前」。それが転じて柳の舞になったという説があるが、そんな深い海の中をのぞいたんだろうかと、少々首を傾げたくなる。北海道では漁師がヤナギノマイと呼ぶことも少ないような気がする。モヨ、モイ、モンキ、モンケ、ダック、ダッコ…と地方によっていろいろで、よく混乱した。こうした呼び名については何を由来としているのか皆目分からない。
 釣り人が好む高級魚のマゾイは、本名である標準和名としては図鑑にない。タヌキメパルとキツネメバルという見た目には区別が難しい2種類の魚の便宜上の名である。
 アブラコにも2種類あるのを釣り人ならよく知っている。日本海側と、太平洋の日高沿岸から南の方で釣れるのが、標準和名のアイナメ。道東の方に多いのが同じくウサギアイナメである。食べておいしく高級なのはアイナメで、釣り人はホンアイナメと呼んだりする。形はよく似ているが、ウサギアイナメは赤黒い色をした物が多い。だが、魚屋ではどちらもアブラコだ。経験ではアイナメは刺し身にしてもうまいのだが、北海道では刺し身ではあまり食べない。“虫”すなわちアニサキスがいるからというのが理由のようだが、とくに太平洋側のアイナメは虫は少ないように思う。ところが、経験ではウサギアイナメには、虫が多いようなのだ。食性の違いなのか、環境の違いなのか、その辺については知識がない。
 

差別・不快用語の問題も
 
 カジカの仲間もややこしい。釣り人が海岸でよく釣るのが、大きいのは50センチほどになる標準和名のギスカジカだが、ギスカジカと呼ぶ人はほとんどいない。イソカジカとかマカジカが通り名だ。しかし、船釣りでは、カレイ釣りなどの外道としてギスカジカと呼ばれる別のカジカがよく釣れる。しかし、こちらの本名はツマグロカジカだ。尾びれなどのひれの端(ツマ)に黒班があることその名の由来だろう。ツマグロというサメやツマグロヒョウモンという蝶の名も、それに由来する。
 ナベコワシと呼ばれるカジカの標準和名はトゲカジカだ。ナベコワシにはもう一種類いて、こちらはケムシカジカという、あまりありがたくない名が本名だ。トウベツカジカとかカワムキカジカとも呼ばれ、卵も珍重される。見た目が少々グロテスクなので、こんな名がついたのだろうか。道南でよく釣れるニジカジカは本名の方が素敵で味も良いのに、通り名はベロカジカだ。道東でよく釣れるオクカジカも本名はまともなのに、シラミカジカと呼ばれる。
 魚ではないが、エゾバフンウニだってもっといい名をつけたら、さらに高級品になったのではないか。もっとも、今はバフンを見ることもほとんどなくなった。昔は道路によく落ちていた。バフンてなに?という若い人もいるかもしれない。
 バフンならまだしも、「メクラ…」、「セムシ…」、「イザリ…」などの差別用語や、「ハゲ…」、「チビ…」、「バカ…」など、ときに不快感を与える言葉が魚などの生物に使われることが問題視されるようになった。また、ヤマメとサクラマス、アメマスとエゾイワナ、ベニザケとヒメマス(チップ)のように、同じ魚なのに二つの本名がある魚がいる。時期によって川のヤマメは釣っていいが、川のサクラマス釣りは全面禁止。同じ魚なのに?釣り人でなければ、意味不明かもしれない。こうした理由から、魚など生物の名前の安定化に向けた議論が近年高まっているという。以下、次回でふれてみたい。


 カレイの一種であるソウハチを食べながらふと思った。漢字では宗八と書かれて売られたりしているこの魚の名前は、一体だれが付けたのだろうかと。そして、何ゆえソウハチというのかと。
 カレイは、枯れた葉の色に似たエイのような魚の意の「カラエヒ」という古名が転じたものという説がある。漢字の鰈の旁(つくり)の部分、枼(よう)も薄いという意味で、なるほどと思った。
 だが、ソウハチという文字からは、なかなかイメージが沸いてこない。まさか宗八という人が名付け親というわけではあるまい。ネットであれこれ検索してみたら意外に簡単に語源らしき記載にたどり着いた。
 それによると語源は「総髪」なのだという。総髪とは、ちょんまげを結うために剃る頭髪の月代(さかやき)の部分がない髪形。つまり普通に伸ばして後ろになで付けて束ねているものである。山の中を歩き回って修行する山伏(やまぶし)の髪形だという。由井正雪や近藤勇、坂本龍馬などの髪形との記載もあった。総髪を後ろから眺めると、なるほど頭を上にした黒っぽい表皮のカレイの形が浮かんでくる。なかなかしゃれたネーミングといえるかもしれない。後にソウハツが訛ってソウハチとなったか。それしても、ソウハチの語源に坂本龍馬まで登場してくるとは思わなかった。
 

標準和名とは何か?

 ところで、魚などの生物には、その種を表すために世界共通である学名が付けられている。しかし、ラテン語やギリシャ語で書かれた学名を使うのは学者や研究者ぐらいだろう。普通はソウハチのように、図鑑などに載っている標準和名を使う。または、標準和名のアイナメを北海道ではアブラコ、青森ではアブラメなどと呼ぶように、その地域による地方名が使われている。言葉でいえば、標準和名は標準語で、地方名は方言というわけである。ちなみに、渋沢敬三という研究者は魚の地方名を調べて、「日本魚名集覧」(昭和17年)という書物にまとめたが、その中に収められている1230種(その書物では標準和名ではなく和学名と称している)の中で、地方名が一番多いのはメダカだった。なんと、2699もあったという。メダカを除き、平均すると一魚種あたり12の地方名があると書いてあった。というわけで、地方名があまり多いと、混乱したり不便なこともあるので、標準和名が考えられたのだろう。
 では、全国共通のこの標準和名は、いつ誰が決めたのであろうか。初めに水産庁に聞いてみたが、そこでは分からず、日本魚類学会という団体を教えられた。この団体の中に標準和名検討委員会というのがあって、その委員長が神奈川県立生命の星・地球博物館の動物担当学芸員である瀬能宏さんという人であることが分かり、いろいろ教えてもらうことができた。瀬能さんには、「虫の名、貝の名、魚の名」(東海大学出版会)という共著もあり、そこでも標準和名についてくわしく書いている。
 瀬能さんによると、1913年(大正2年)に、日本の魚類分類学の祖といわれる東京帝国大学の田中茂穂教授がアメリカの二人の学者との共著として発表した「日本産魚類目録(実名は英文)」で選定した魚名が、概念としての標準和名の始まりとのことだ。それが1230種である。その後は新種などが追加され、2000年に刊行された「日本産魚類検索」(中坊徹次編)には3863種が収録されているそうだ。魚の名の話は尽きないので、次回でもふれたいと思う。


 釣り業界は、昔から不況に強いと言われてきたが、現状は果たしてどうなのか。全国の釣り具メーカーで組織する社団法人日本釣用品工業会が実施している「釣り用品の需要動向調査」によると、2009年の国内の小売市場規模は1833億4000万円(推計)で、対前年比98.1%。結論から言うと、経済的背景を考慮すれば、釣り業界は“健闘”しているということになる。
 消費の傾向としては、中・高価格帯の商品の買い控えが顕著という。つまり、消費者は新しい釣り具を買うことよりも、釣りに行くことを優先しているというわけだ。その結果、エサなどの小物は結構売れているのである。とくにファミリー層が釣りに参加するようになったといわれる。マニアのように高価な釣り具は買わないが、最低限の釣り具は購入する層だ。他のレジャーに比べると健康的で割安感があるのが、釣りが不況に強いといわれる所以だ。
 不況を背景に、中古の釣り用品専門店が増え、市場規模も年々拡大している。中古市場は90億円(推計)で、市場での構成比は4.7パーセントだ。一般の釣具店が中古コーナーなどを設けて参入するケースも目立っている。ネット販売額も増加しており、市場全体の3~5%といわれる。
 釣りの種類別では、海でのルアー釣りが、ここ数年右肩上がりで伸びている。2009年は354億2400万円(構成比29.7%)で対前年比112.5%の伸び率だ。他の釣りジャンルが軒並み数字を下げている中で、独り勝ちである。北海道でいえば、海岸でのサクラマス釣りやアメマス釣りなどである。金額ではこのジャンルが一番多い。二番目は磯や港の釣りで、221億5600万円(同18.6%)。三番目は船釣りの186億700円(同15.6%)となっている。以下、ルアー釣り(バス)、アユ釣り、投げ釣り、ヘラブナ釣り、ルアー釣り(トラウト他)、渓流釣り、フライフィッシングの順。
 反省点としては、新たな釣りジャンルや釣り方を開拓しようとするあまり、細分化が進んで商品構成が複雑で分かりにくくなっていることだ。そのため逆に需要にブレーキがかかっているという。実際、最近の釣具店では品物の種類が多すぎて、釣りを始めようとする人が訪れても戸惑うばかりだ。
 
自社用にン億のクルーザー!?
 
 北海道の釣り業界は、あるメーカーによると「全国の数字より5%ぐらい悪いのではないか」という。だが、北海道の業界とて個別にみると、決して暗い話ばかりではない。
 ある社長は、ポケットマネーで1000万円近い外車をポンと買った。また、別のある社長は、やはりポケットマネーでマンション一棟を買った。持ち主が倒産したのでとても安く買えたと、取り引き先の前でうれしそうに話していたそうだ。会社はともかく個人的にはお金持ち、というのは結構いるようである。 さらに、ある大手釣具店では、ン億円もするクルーザーを海外で造らせているという。社員の福利厚生や接待などに使うようだが、今時そんな話があるんだと驚いた。もっとも、釣り具の販売でもうけたのかどうかは定かではない。 そして、全国的に知られたある大物経済人は、やはりン億円をポンと出して豪華な釣り堀のオーナーになった。趣味の釣りが高じたらしいが、あるところにはあるものである。
 さて、今年度はどうなのか。「厳しい」と予測する声がもっぱらだ。釣り業界紙の「釣具新聞」が製造、卸、小売の各大手に今年前半の景気・景況についてアンケート調査したところ、回答した100社のうち72%が「悪い」と答えたという。北海道では期待のカラフトマスが釣れず嘆いている業者が多い。サケは果たしてどうか。最近、ある大手釣りメーカーの広報幹部は、宣伝広告費の削減を要請するため全国の釣りマスコミを訪ねたとか。全国的には景気悪化はどうやら本物のようだ。

  2月に大阪と横浜で大規模なフィッシングショーが開催された。前者は、「フィッシングショーOSAKA2010」(主催者・大阪釣具協同組合)で、5日から7日まで大阪南港にあるインテックス大阪で開催された。後者は「国際フィッシングショー2010」(主催・日本釣用品工業会)で、12日から14日まで横浜港のパシフィコ横浜で開催された。入場料は両者とも大人が1200円と有料(中学生以下は無料)だが、入場者数は大阪が5万1881人で対前年比105%、横浜は5万5458人で、こちらも対前年比107%と盛況だった。女性の釣り愛好者も増え、このうち約4分の1が女性である。
 ショーの内容は両者とも同様で、釣り具メーカーの製品展示ブースがメーンだ。私は毎年、横浜の方に出掛けている。横浜の出展者数は175社・団体(大阪は121)。日本最大の釣り具メーカーであるグローブライド(ダイワ精工から社名変更)やシマノ、がまかつといった総合メーカー、仕掛けなどの専門メーカーが春の釣りシーズンに向けて一斉に新製品の発表を行うため、人気ブースはまさに黒山の人だかりである。
 釣り具メーカー以外には、ボート、魚群探知機、サングラスなどのメーカーも出ている。このほか、釣り関係の出版社や新聞社、釣り専門テレビ、動画サイトなどのメディア関係、釣り大会などを開催している漁協、我々日本釣振興会のような釣り団体、釣り専門学校などのブースもあった。北海道からは、NPO法人の阿寒観光協会まちづくり推進機構が出展していた。5月と6月に阿寒湖で開催する釣りイベントのPRのためだ。
 
北海道でも3回目開催?
 こうしたブース以外には、子どもたちを対象にした釣り堀や金魚すくいの体験ゾーン、釣り教室、魚拓コーナー、伝統工芸の竹竿(江戸和竿)の製作実演コーナーもあり人気を集めていた。飲食ゾーンでは、マグロ丼や寒ブリ丼、アナゴの丸ごと一匹天丼などを安く販売し、長い行列が出来ていた。
 釣りの世界には、釣り人だけが知っているスターやタレント的な人物もいる。ステージやブースでの彼らのトークショーが目当てという人も多い。中には本物の芸能人もいる。エド山口さんは、釣りの世界での知名度の方があるのではと思うほど有名だ。山田邦子さんはゲストとして会場を訪れていた。毎年、釣り好き著名人から選ばれる「ロイヤルアングラー」の芸能人部門で受賞したからだ。このほか経済部門は木村宏氏(日本たばこ産業社長)、文化部門は田崎真也氏(ソムリエ)、スポーツ部門は佐々木主浩氏(元野球選手)が受賞した。今回会場で見かけた一番の有名人は、日本釣振興会名誉会長の麻生太郎元首相だろう。首相時代の重圧から解放されたためかオープニングセレモニーでの挨拶もじつに元気だった。
(写真説明)
釣り具メーカーのブースで説明を聞く麻生元首相



 この東西のフィッシングショーは両方とも50年近い歴史がある。ヨーロッパやアメリカ、中国でもかなり大きな規模のフィッシングショーはあるがバイヤーが対象で、日本のような一般客も参加してのお祭り的なものは例がないという。地方レベルでは、4月11日(日)に東北初の「フィッシングショーinあおもり2010」が開催された。県内外からの1万2000人近くが入場した。このイベントが成功したのは、金銭的にも地元の釣具店の献身的な努力があったからという。そうしたボランティア精神がなければフィッシングショーが成り立たないというのは、日本の釣り具メーカーを筆頭とした業界の脆弱さや、釣りファンに還元しようという意欲の希薄さが感じられて、情けない話でもある。北海道でも今までに2回、フィッシングショーが開催された。2回目は今から9年前だった。最近あるところから3回目を企画したいという話が舞い込んだ。業界の反応は、景気を反映してか冷ややかというが、ぜひ実現させたいものである。業界が釣り発展のために、釣りファンに真摯に向き合っていかなければ衰退するのは間違いない。
 

釣りと魚のよもやま話(26)ヤマミチ・マサカツ
(ウイングサッポロ2010年3月号掲載に一部加筆)


 3月ともなれば、釣り人たちがそわそわしだす。春の釣りシーズンに備え、再び釣り道具を引っ張りだして点検したりする。例えば、最も大切な釣具の一つである釣り糸が傷んでいたら、リールに新しい物を巻き替えなければならない。
 ふた昔ほど前までは、釣り糸のことをテグスと呼ぶ釣り人が結構いた。釣り糸メーカーには山豊テグスという会社もある。テグスは漢字では天蚕糸と書く。要するに本来は絹糸で、とても高価だった。同じ重量なら金より高かったそうだ。
 しかし、東レが昭和17年に日本で初めてナイロン製釣り糸の販売を開始して、革命が起きた。以来、テグスという言葉もラインといった言葉に置き換わりつつあるが、ビーズアクセサリーに使用する糸は今もテグスと呼ばれているというからおもしろい。
 釣り糸には、フロロカーボンという素材を使ったラインもある。フロロカーボンはフッ化ビニリデン樹脂というフッ素と炭素の化合物。クレラップでおなじみのクレハが、釣り糸としては昭和46年に日本で初めて商品化した。ナイロンは吸水性があるが、こちらはほとんどなく劣化しにくい。また、ナイロンに比べ、あまり伸びないため、魚の当たりがダイレクトに伝わってくるなどの利点もあるが、やや高価である。
 
溶ける糸に感謝!
 
 このほか、昭和62、63年ごろに発売されたPEラインというのもある。PEとはポリエチレンの略で、詳しくは超高分子量ポリエチレンという。細長い糸をよって作ってあり、ナイロンより3、4倍強い。こちらもほとんど伸びないなどの利点があるが、ナイロンより何倍も高価で、太さにもよるが100メートルで数千円もする。
 釣具店で売られているのはこの3種類といってもいい。
 今の釣り糸はとても丈夫なのだが、切れたラインが野鳥などにからまって、時々マスコミなどで批判される。そこで、東レは自然界で分解するプラスチック(生分解性ポリマー)を使った釣り糸を開発し、平成8年から発売を開始している。
 ところで、手術用の糸も、昔は絹糸が使われていたそうだ。今は体の中で溶けてしまう生分解性プラスチックの「合成吸収糸」やナイロンなどの溶けない「非吸収糸」というのが使われている。実は、私もこの合成吸収糸にお世話になった。数年前に喉頭癌の手術をした。声帯がなくても肉声で話せるという不思議な手術で、北海道在住者では私が第一号らしい。簡単にいうと喉仏がある喉頭の大部分を取り除いて、上と下を糸でくっ付けるのだが、事前に主事医から「使うのは釣り糸みたいなもので、1号といってかなり太いサイズを使う」という説明を受けた。釣り糸の太さを表す場合も号という単位を使うので、ちよっと驚いた。もっとも規格は違うようで、釣り糸の1号は直径 0.165ミリ(社団法人日本釣用品工業会標準規格) だが、手術用の1号は直径0.5ミリぐらいあるようだ。 手術後は、前述した釣り糸同様、生体内で加水分解され、最終的に水と二酸化炭素になる。こうした技術がなかったら、私の手術はうまくいかなかったかもしれない。
(写真)釣り糸には実に多くの製品があるが、使われている素材は主に3種類である

釣りと魚のよもやま話(25)ヤマミチ・マサカツ
(ウイングサッポロ2010年2月号掲載に一部加筆)


 またまた釣りの大事故が起きた。昨年の12月11日に苫小牧東港の沖の防波堤で夜釣りをしていたグループが、帰ろうとして乗り込んだプレジャーボートが転覆。海中に投げ出された6人が亡くなった。2002年の9月には、サロマ湖で釣りのプレジャーボートが転覆し7人が死亡している。また、2003年の3月にも石狩の厚田漁港沖でもやはりボートが転覆して3人が死亡した。そうした事故が記憶に新しかっただけに、とてもショックだった。苫小牧東港の事故の前月に、我が日釣振北海道地区支部の役員会が開催され、小樽海上保安部から2人の担当者を招いた。その会議で、昨年は小樽海保の管内だけでも釣り人4人の死亡事故が起きており、ボートによる事故も増えていると指摘を受けたばかりだった。釣り人の事故は、全国的な問題だ。苫小牧東港の事故が起きた翌日の12日には、茨城県の鹿島港の防波堤でやはり夜釣りをしていた3人のグループが行方不明になった。当時は低気圧の通過で波が高かった。恐らく高波にさらわれたのだろう。苫小牧東港には、船でしか行けない沖の防波堤が3箇所ある。今回のグループが渡った防波堤は比較的新しい防波堤だ。実は以前は、かなり大っぴらに沖の防波堤に渡ることができた。渡してくれる遊漁船が何隻かあって、私も何度も行っている。日中は大物のアブラコやカジカ、ババガレイなどが釣れ、夜はソイが釣れる。天気の良い週末ともなると、昼夜を問わず多くの釣り人が訪れ、業者はピストン輸送するほど人気があった。転落事故はこの当時から何度もあったようだ。場所によっては、水面からの高さが5、6メートルもあり、落ちたらまず自力では上がれない。みんなで助け上げたなどという話をよく聞いたものである。しかし、2002年の11月に釣り人が転落して死亡してから、関係当局の対応が厳しくなり、業者が渡さなくなった。今まで大目に見てくれていても、事故が起きればこのようにどんどん制限されていく。日釣振は港での釣りを、もっと積極的に開放してほしいと常々要望している。苫小牧東港の沖防波堤でも、せめて釣り大会を開催させてもらえないかと、港の管理組合にお願いに上がったこともあるが、まだ実現していない。こうした事故が起きると、ますます難しくなるのは必至で暗澹たる気持ちになる。鹿島港にしても、その後さらに監視が厳しくなり、釣り人が激減して、地元の釣具店の売り上げが半分になったという話も聞いた。釣り人の事故は、業界にも悪影響を与えるのだ。
 
港での転落は自己責任
 
 大阪港では、2007年8月にやはり船で渡した場所で、釣り人の転落事故が起きて、遺族が大阪市長などを相手取り港湾施設の管理責任を問う裁判を起こした。このため当局が態度を硬化させて、大阪港のすべての港湾施設への市民の立ち入りを禁止する条例を定めるという方針を打ち出した。地元の釣り界にとっては一大事である。多くの反対意見が寄せられたこともあって、検討委員会を設置し話し合いを重ねた。その結果、利用者との話し合いによるルールを作成し、港湾業務等に支障のない場所については、釣り人や渡船事業者、さらに釣り団体等が、施設管理者とも協力して十分な安全対策を実施すること、また、立入規制やマナーを遵守することを前提に立ち入りを認めるといった報告がまとまり、全面的な立ち入り禁止は回避できる見通しとなった。一方、裁判については、原告側の訴えを破棄するという判決が昨年11月に出され結審した。つまり、この判決によって、こうした釣りの転落事故に関しては、行政側の管理責任が問われることなく、釣り人側の自己責任による行為であることが明らかになったということである。この裁判による新しい判例は、全国の釣り人や港湾管理者の注目の的になっており、今後市民の立ち入りに関わる港湾施設の利用ルールの策定などに大きな影響を及ぼすものと思われる。管理責任を問われないということになれば、むしろ開放に向かう可能性もある。
 釣り場では、天候などの状況判断を慎重に。ライフジャケットを必ず着用し無理や油断も禁物である。冬場ならば、水温が低いために今回の事故のように、ライフジャケット着ていても助からないこともある。しかし、行方不明になってしまうよりはマシである。残念で悲しいことではあるが、亡くなってもせめて浮いていてほしいというのが、捜索する人々の本音なのだ。家族などの関係者も、いつまで見つからないのは辛いに違いない。釣り人は、自分の命について後々までも責任を持たなければならない。ライフジャケットはその意思表示のためにも着なければならないのだ。しかし、やはり絶対に釣りで死んではいけない。

 先月号で、わが(財)日本釣振興会(日釣振)の会長に麻生前首相が復帰するかもしれないと書いたが、どうやらそれはないようである。戻ってくるのを前提にしていたためか、首相就任時から会長職は空席のままだ。誤解されがちだし、もう政治家を担ぐのはやめた方がいいのかもしれない。もっとも法律が改正され現在、財団法人や社団法人は「公益法人認定」を受けるか否かの移行期間にある。要するに、役人の天下りの受け皿となっているような、わけのわからない財団法人や社団法人が増え過ぎたため、一度整理しようということなのだろう。公益法人の認定を受けなければ、今までのような税制面での優遇措置もなくなるという。日釣振は、今年の11月にも内閣府の公益法人認定委員会に認定の申請をすることになっているが、審査のハードルは高く、例えば会長などの役員は、会議に本人がきちんと出席できなければだめである。つまり政治家やタレントなどがお飾りで就任するわけにはいかないのである。公益法人に認定されれば、おそらく釣り団体としては、日本でただ一つの団体となるだろう。
 さて本題に入ろう。石狩市の茨戸(ばらと)川は、石狩川の河口近くにある支流の一つで、いわゆる三日月湖のようにも見えることから一般には、茨戸湖とも呼ばれている。国道231号線(石狩街道)が、ガトーキングダム(旧札幌テルメ)付近で川をまたぐ辺りには、発寒(はっさむ)川、創成川、伏篭(ふしこ)川が合流する。合流点から東側の茨戸川は、札幌市との境界ともなっている。合流点から西側は、石狩市役所付近で北へと向かい、川の博物館のところで、石狩方水路により石狩湾新港と結ばれ、さらに北にある生振運河で石狩川と結ばれている。運河からは2キロほどでどん詰まりなのだが、その間はなぜか真薫別(まくんべつ)川と呼ばれる。
 生息する魚類はコイ、ヘラブナなどが知られ、釣りも盛んだ。とくに冬場はワカサギ釣りのメッカとなっている。毎年、12月の下旬ともなると氷の上に釣り人が乗り出す。早いうちから釣りが出来るポイントは、前出の真薫別川が道々508号(矢臼場札幌線)と接する辺りや、西側で国道337号線が川をまたぐ生振大橋のたもと付近である。氷は徐々に中心部でも厚くなり、釣り人はさらに増える。人気があるのは、川の博物館付近やガトーキングダムの対岸である。このほかにもポイントはいくつかあり、3月上旬まで楽しめる。ワカサギ釣りは無料である。駐車場が整備されているわけでもないから、多くが路上駐車である。歩道の上などにも停めているが、冬場は人通りがあまりないような場所のためか、警察も大目にみてくれている。
=写真=茨戸川の人気ワカサギ釣りポイント、川の博物館付近 


釣れるのは放流のおかげ
 
 毎年多くの釣り人が、たくさんのワカサギを釣り上げているが、いなくならないのはなぜだろう。実は地元の石狩湾漁協が、増殖のために毎年約3億粒もの受精卵の孵化放流事業を行っているからである。石狩市も助成金を出しており、20年度は生産量66.7トン、漁獲高は2316万円ほどとなっている。ワカサギ生産量約200トンで全道一の網走湖には及ばないものの、主要産地の一つであることは意外に知られていない。ちなみに石狩の放流用受精卵は網走湖産である。釣り人は、いわばこの増殖事業のおこぼれをちょうだいしているわけである。にもかかわらず、釣り人には自然繁殖していると思っている人が少なくない。
 困るのは、氷上やその周辺にゴミを置いていく人たちも多いことだ。昨年あるポイントでは、釣り人が路駐している道路を、周辺の住民数人が毎日のように巡回してゴミ拾いをしていた。「毎年、この季節になるとうんざりする」と怒っていた。放っておくと、春になって雪が溶けたときにごっそりと顔を出す。氷上ならば湖を汚し環境悪化を招く。魚たちにとってもいいはずがない。
 川の博物館では釣り人のためにトイレを解放している。近くのサーモンファクトリーでも路駐を見かねて、駐車場やトイレを無償で提供してくれている。冬の風物詩といわれる石狩のワカサギ釣りが漁業者の努力ばかりでなく、こうした善意に支えられていることもぜひ知ってほしい。
(財)日本釣振興会
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