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釣り団体・行政ニューストップ

北海道アングラーズペンクラブ 【2013年記事一覧】


潮を釣る⑥
春と秋に釣りの事故が多いのは気象条件が大きく関係している
太平洋の潮位差が大きいのはなぜ?

※ノースアングラーズ2012年12月号「釣界潮解」に一部加筆

 釣り人の死亡事故が相次いでいる。2012年の秋にはサケ釣りなどの最中に高波にさらわれたりする事故が発生した。2012年10月5日、十勝管内豊頃町の大津漁港の防波堤で4人が波にさらわれ1人が死亡、同年10月7日には宗谷管内猿払村の海岸で親子2人が波にのまれ死亡した。同年10月12日は、留萌管内増毛町の雄冬漁港でも防波堤から転落して死亡している。これまで、釣り人が気にする潮汐(潮の満ち干)に関していろいろ書いてきたが、特に大津漁港のケースは、これとも大きく関係しているように思う。
 潮汐がなぜ起こるかについては、月と太陽の引力を源とする起潮力による。その位置関係で、1日のうちに満潮や干潮、1カ月のうちに大潮や小潮が繰り返される。そして、1年では、地球の傾きの関係で春と秋に満潮と干潮の差が大きくなる。最もその差が大きくなるのは、2012年3月20日の春分の日、9月22日の秋分の日である。春が潮干狩りシーズンなのは、このためだ。また夏から秋にかけては、1年のうちで潮位が最も高くなり、この間の満月や新月の日を中心にその前後の数日間は満潮時の潮位が特に高くなる。さらに、台風が接近しているような気象条件が重なれば、高潮により大きな被害が出たりする。



 「台風に伴う風が沖から海岸に向かって吹くと、海水は海岸に吹き寄せられて『吹き寄せ効果』と呼ばれる海岸付近の海面の上昇が起こります。この場合、吹き寄せによる海面上昇は風速の2乗に比例し、風速が2倍になれば海面上昇は4倍になります。特にV字形の湾の場合は奥ほど狭まる地形が海面上昇を助長させるように働き、湾の奥ではさらに海面が高くなります。また、台風が接近して気圧が低くなると海面が持ち上がります。これを『吸い上げ効果』といい、外洋では気圧が1hPa低いと海面は約1cm上昇するといわれています。例えばそれまで1000hPaだったところへ中心気圧が950hPaの台風が来れば、台風の中心付近では海面は約50cm高くなり、そのまわりでも気圧に応じて海面は高くなります。このようにして起こる海面の上昇を高潮と呼び、推算潮位との差を潮位偏差(実際の潮位=推算潮位+潮位偏差)と呼びます」(気象庁のホームページより)。
 10月5日の大津漁港の事故が起きた午前6時45分は、中潮(9月30日~10月3日大潮)の満潮時に重なっていた。しかも、4日から5日にかけて太平洋岸を台風19号が北上し、5日の朝には低気圧に変わって道東沖に抜けていくというな気象条件だった。これでは、大きな波が防波堤を越えて来るというような状況にもなろうというものだ。
 一方、春は天気がめまぐるしく変わる。この時季の低気圧は急速に発達し進行速度も速いので、一見穏やかそうに見えても、天候が急変して、事故につながりやすい。そういう意味では冬場よりもむしろ危険かもしれない。この春と秋が釣りシーズンであることが、釣り人の事故が絶えない大きな理由の1つである。港や防波堤などでの岸壁の釣りはもちろん、砂浜のような場所でもライフジャケットの着用が必要であることが、今回の猿払村での事故により示された。小さな子どもが亡くなっただけに痛ましさが募る。
 ところで、太平洋岸は潮位の差が大きく、日本海側は小さいのは、よくご存知だろう。では、それはなぜだろうか。「小さな湖で潮汐が生じない理由(水塊全体の質量が小さいと地球重力の影響に対して起潮力の影響が相対的に小さくなるため)と同様に、日本海は外海と接続する各海峡の水深が極めて浅く、中の水塊が外海へ移動し難く、言わば重力によって桶の中に閉じ込められ(隔離され)ているようなものなので、現象として表れる潮汐が小さくなる」(海上保安庁のホームページより)というわけだ。ちなみに世界最大の潮汐はカナダのファンディ湾で、潮位差は15mにもなる。これは、その地形により「共鳴」という現象が起きて潮汐が増幅されるからだそうだ。
 また、北海道の噴火湾のような地形では、潮流が反射して1日に満潮や干潮が2回ではなく3回起きたりする場合もある。潮汐の世界は不思議である。(以下次号)

潮を釣る⑤
出回る“怪しげな潮汐表”
航海に利用するのは危険

※ノースアングラーズ2012年11月号「釣界潮解」に一部加筆

 前回までは、未来に起こる満潮と干潮の予測値の二大情報源である気象庁と海上保安庁のホームページの利用法を紹介した。満潮時や干潮時の潮位とか潮高(同じ意味だが観測機関により違う)が、1カ月分とか1年分まとめて掲載されており大変ありがたいが、そこにたどり着くには、少々分かりにくかった。
 その点、便利と思われるのが、観測機関の1つである国土地理院「海岸昇降検知センター」のホームページだ。同センターは、「国や地方自治体、民間の機関がそれぞれの目的で設置している潮位観測施設の観測記録から地殻活動を検出し、地震予知研究に役立てるため、これらの資料を統一した方法で迅速に取りまとめて公表することを目的に、昭和40年に設置されたもの」(同ホームページより)で、関係機関の潮位データのホームページにすぐいけるようになっている。また、全国の験潮場の一覧表など、潮位観測に関する知識も得られる。

海岸昇降検地センターのHP

 潮汐の予測値を公表しているのは、公的機関としては、気象庁と海上保安庁だが、民間でもネットで予測値を掲載しているサイトがある。私が知る限りでは2つあったが、ほかにもあるかもしれない。そのサイトによれば予測値を計算するソフトも公開されているようだ。ただ、その計算の元となったのは2つのサイトとも、海上保安庁水路部発行、書誌742号「日本沿岸潮汐調和定数表」(平成4年2月発刊)から得られるデータを使用しているとし、あくまでも海上保安庁海洋情報部が毎年刊行している「潮汐表」が公式の潮汐推算値であり、航海にはそちらを使用するようにと、きちんとただし書きしている。
 「一般企業が独自に潮汐観測を実施して定数を算出するケースは、水深測量を実施する社以外には、あまり聞いたことがありません」(海上保安庁・海の相談室)というように、潮汐の予測値を得るには、関係する公的機関に頼らざるを得ないのである。
 出版などの営利目的での利用にあたっては、少々面倒でも関係機関に届け出るなどして、データの出所などの必要事項を記載すればいい。たとえ営利を目的としていなくても、データの出所などを明記するのが、最低限のルールだろう。
 にもかかわらず、そうした手続きが面倒なのか、はたまた何かやましいことがあるのかは知らないが、データの根拠などの説明もほとんどなく、さらには印刷物には当然あってしかるべき発行所などの所在地や連絡先の記載もない“怪しい潮汐表”が、しかも販売目的で、さらには広告も掲載し、釣具店などに置かれて、毎年大量に出回っているのである。その存在は海上保安庁でも「把握している」とし、もしそれが同庁のデータを無断で複写しているものならば、きちんと手続きし航海には同庁の「潮汐表」を使用することも記載するよう指導するという。ちなみに、このノースアングラーズにも「潮時表」が掲載されているが、必要事項がきちんと掲載されている。
 入手した怪しげな潮汐表に掲載されている数値をみると、ある民間のサイトの予測値と一致した。しかし、そのことについては何も触れていない。恐らく盗用なのだろう。仮にそれが自由に使っていいものだとしても、データの出処を明らかにするのが筋というものだ。しかも、驚いたことに、その潮汐表には、データが版元(版元の記載はないが、どこで作られているかは仕入れている釣具店ならみな知っている)から提供されたとあるのだ。版元を明らかにすれば、自社データとすればいいものを、“提供データ”とするのは、版元を隠したいためなのか。版元も明らかでない、データの出処も怪しい出版物に広告を出す企業や釣具店の神経もどうかしている。書店ならけっして扱わないだろう。疑惑だらけの潮汐表なのである。
  「誤った情報が世に出回り、それが航海目的に使用されることは大変危険なこと」(同海の相談室)。万が一それが元で、座礁などの海難事故などが起きたとするならば大変である。実際、そうした怪しげな潮汐表を利用しているマリーナ関係者もいるのだ。
  「釣りに使うなら、そんなに神経質にならなくとも」と思うかもしれないが、もし満潮時間や干潮時間、そして潮位が、公的機関のそれとは大きく違っていたとしたらどうだろう。それを信じて水溜まりをこいで渡っていた釣り人が磯に孤立して、高波にさらわれてしまうことだってあるかもしれない。たかが潮汐表と侮るなかれと思うが、いかがだろう。
 楽しく安全な釣り、そして航海のためにも、“潮汐表”を手に取る機会があったならば、そのデータの出所がどこなのか、そしてどこが責任を持って発行しているのかを確認し、利用することをお勧めしたい。(以下次号)
 

潮を釣る④
海上保安庁「潮汐表」は航海用の公式予測値
気象庁「潮位表」は基礎的データとして特色

※ノースアングラーズ2012年10月号「釣界潮解」に一部加筆

 図(潮を釣る②に掲載)に示した大潮の平均的な干潮面=潮位表基準面(最低水面)からの値が、一般には潮位や潮高と呼ばれるものだ。こうした潮汐にまつわる話を書いて、今回で4回目となった。前回は気象庁のホームページに掲載されている「潮位表」の利用法を中心に書いた。今回は、海上保安庁の潮汐予測値について紹介しよう。海上保安庁(本庁)のホームページのトップーページの下に「データ集」というのがあり、その中の「潮汐情報」をクリックすると、同庁海洋情報部の「リアルタイム験潮データ」のページが表れる。そこに「潮汐推算」というボタンもあるので、クリックすると全国地図が表れる。さらに「地域1」の北海道を選ぶと、北海道地図が表れるので、調べたい地点(45カ所)をクリックすると、今日の潮汐曲線(グラフ)や毎時潮高の表が掲載されたページとなる。将来の潮汐が必要なら日付欄に入力すると、目的の日のグラフや表が表れる。日付は西暦元年~2100年の期間について設定できる。ただ、ここには1カ月分とか1年分まとめた一覧表は掲載されていない。1年分については、海上保安庁の海洋情報部が発行している「潮汐表」第1巻に全国の主要な71港の毎日の高・低潮時とその潮高などが掲載されている。ちなみに第2巻には外国の港の潮汐が掲載されている。航海目的には、この潮汐表を使用することになっている。毎年3月には、翌年の物が発売されている。平成25年(2013年)については、税込みで3864円。海上保安庁の関連団体である日本水路協会のホームページのネットショップでも購入できる。
 そこまで必要ないなら、各管区海上保安本部のホームページにも、1カ月単位で一覧表が掲載されている。例えば、北海道であれば、第一管区海上保安本部のホームページのトップページのバナーの1つの「北海道の海」をクリックすると、さらに「潮汐カレンダー」というバナーがあるので、クリックすると北海道の地図が表れ、68カ所について、1カ月単位で2012年の高・低潮時及び潮高を掲載した「潮汐推算表」が得られる。ただし、ここに載っている数値は、前出の「潮汐表」と異なる計算で求めているため、若干値が異なることがあるという。航海目的には、やはり「潮汐表」を使用するよう注意を喚起している。
 気象庁の「潮位表」と海上保安庁の「潮汐推算表」(一菅のホームページのもの)の数値について、例えば小樽の2012年の8月分を見比べたところ、気象庁の「満潮干潮時」と海保の「高低潮時」は、数分から十数分違う。同じく「潮位」と「潮高」についても数センチ違っていて、同じものはほとんどない。
気象庁と海上保安庁の潮汐の予測値について、「航海の用に供する公式の予測値(潮汐推算)は、航海等における混乱を防ぐため、各国の水路機関が責任を持って行うことになっており、海上保安庁海洋情報部で毎年刊行している「潮汐表」がこの公式の潮汐推算値となります。一方、気象庁から出されている推算値は、気象変動・防災(津波、高潮、異常潮位等)など基礎的なデータとしての特色を持っています」(海上保安庁海洋情報部「海の相談室」)。
 また、それぞれの予測値の違いについては、「データは基本的には同じですが、公表されている予測値(当庁→潮汐表 気象庁→潮位表)は場所により若干差があると聞いています。それは予測値を算出するための定数に若干違いがあるからです。当庁も気象庁もそれぞれ保有している験潮所の観測データから定数を求めています。定数の数により、予測値も変わります」(同)。
 定数とは、「潮汐を起す力(起潮力)は天体(月と太陽)の引力の効果です。これら天体の運動は複雑ですが、大部分の運動は周期的であるため、起潮力は様々な周期の三角関数の総和として表すことができます。この、個々の周期の三角関数で表される潮汐の成分を分潮と呼び、三角関数に含まれる振幅と遅角(天体の周期的な運動に対する、分潮の振動の遅れ具合)の値を調和定数と呼びます」(気象庁のホームページより)ということだそうだが、理科系には、なるほど!という人もいることだろう。うらやましい…。(以下次号)

潮を釣る③
潮位表の予測値と実測値は違うのだから、
そんなに気にしなくとも…

※ノースアングラーズ2012年9月号「釣界潮解」に一部加筆

 探究心の強い釣り人が、釣具店などで手に入る潮位表に掲載されている潮位がどこから測ったものなのかといった質問を日頃私に浴びせ、私もよく分からなかったというのが、潮汐をテーマに書いてみようというきっかけとなり、今回3回目となった次第である。
 これまでに、関係機関のホームページを見たり、それでも分からなければ問い合わせたり、図書館で文献に当たったりした。その結果、物理学や天文学なども関係する潮汐学という学問があることを知る。未来に起きるであろう満潮や干潮、すなわち潮汐の予測値(予報値や天文潮位などともいう)を計算するには、「分潮」や「調和定数」といった専門用語や計算式がどっさり出てきて、私のように数学に弱い文系人間にはとても太刀打ちできない、奥が深い世界だということが分かった。
 公的機関で潮汐の予測値を計算して公開しているのが、気象庁の「潮位表」と海上保安庁の「潮汐表」である。漢字は違うが意味するところは同じである。
 気象庁のホームページだけでも、相当いろいろなことが分かる。釣り人が知りたがる1年分の潮位表も掲載されている。しかし、ホームページ上でその潮位表こにたどりつくのは、初めてだとややこしくてちょっと戸惑うのではないかと思う(実際私がそうだった)ので、参考までに手順をガイドしよう。
 まず「ホーム」から「防災気象情報」をクリック。続いて「海洋関連」にある「潮位観測情報」をクリックすると潮位の観測地点を示した全国地図が表れる。その地図の下に「潮位観測情報 解説」、「掲載地点一覧表」、「過去最高潮位一覧表」、「潮位の予測値[天文潮位](潮位表)」、「潮位の観測値[実際の潮位](潮汐観測資料)」、「潮位の観測値[実際の潮位]の速報値(潮汐観測資料(速報値))」、「各月の潮汐」の項目がある。
 その中の「潮位の予測値[天文潮位](潮位表)」をクリックすると、また全国地図が表れ、目的の地点を選んだり、必要な期間などの表示内容を選べるようになっており、選んでチェックすると、一定期間の予測値の一覧が出てくる。2013年の1年分をまとめたものが欲しい場合は、その一覧の下に、「PDF版(満潮・干潮のみ 約300KB)」、「PDFF版(毎時潮位含む 約300KB)」、「テキストデータ版(50KB)」、「データのフォーマット 」とあるので、満潮干潮のみ必要なら、それをクリックすれば得られる。
 見落としがちだが、この潮位表ページの地図の左上にある「解説」もぜひクリックしてほしい。潮位表に掲載されている潮位の数値がどこからの値なのかを示す「潮位表基準面」や、「観測基準面」、「標高」、「平均潮位」などとの関係を示す図や説明なども掲載されている。また、先に示した「潮位観測情報 解説」にも、「観測の方式」などの解説があるので参考にしてほしい。
 潮位は、潮位表基準面だけでなく、観測基準面でも表記され、その値は異なるので、それぞれ標高(東京湾平均海面)に換算して表記することもある。
 しかし、釣り人が予測値が掲載されている港の岸壁に立って海面を見ても、潮位表基準面や、観測基準面、標高などの目印があるわけではないから、その日の満潮や干潮時に○○センチ、海面が昇降すると知っていたとしても、実感としては「海面が上がったり下がったりしたかなと」と思える程度だろう。しかも、実際はこの計算上の予測値どおりに潮が動くわけではない。実測による干満潮時や潮位は、さまざまな自然条件により結構違ってくるのである。さらに、同じ港でも場所によって潮位は違うという。 
 にもかかわらず、釣り人には潮位表に載っている予測値のとおり動くものと信じて、数分、数センチの違いが大問題という感じで問い正してくる人もいるのだ。釣果を気にしてのことなら、「今日は大潮だな。満潮は○時ごろだな…」、その程度のとらえ方で十分と思うが、こだわっている人には怒られるだろうか…。(以下次号)


※ノースアングラーズ2012年8月号「釣界潮解」に一部加筆
 
 アイザック・ニュートン(1642~1727)が、万有引力の法則を発表し、潮汐の原理を物理的に解明したというところで、前回は終わった。「海洋研究発達史」(東海大学出版会、海洋科学基礎講座補巻、宇田道隆、1978年)によると、潮汐学が目覚しい発展を遂げたのは、19世紀に入り産業革命のただ中にあったイギリスでのことだった。潮汐予報も進み、1870年には、イギリスの25港の潮汐表が作られるまでになった。また、世界中の港の潮汐表も英国船員用に作られた。言うまでもなく、潮汐表とは釣り人のためではなく、元々は航海の安全のために作られたのである。潮位が下がって海底の岩が露出して座礁したり、場所によっては干満により潮流が激しくなる場合もある。正確さが求めらる所以である。
 物理学者でケルビン卿の通称で知られるウィリアム・トムソン(1824~1907)は、潮汐を起こす各種成分を求めて未来の潮汐を計算するための潮汐予報機を発明した。潮汐の予測には、日頃のデータ収集が必要だが、風や波の影響を受けないように、外の水と通じている井戸の中に、浮き(フロート)を鎖で平衡を保つようにして自動的に計測できるようした自記検潮儀もこの時代に考案された。ケルビン卿はその研究者としても知られ、ケルビン型検潮儀は、今も検潮所の観測機器の一つとして利用されている。自記検潮儀はフランス、インド、アメリカ、オーストラリアなどに広まった。
 日本で潮汐観測が開始されたのは、1872年(明治5年)だ。「海洋観測入門」(恒星社厚生閣、柳哲雄、2002年)によると、日本における科学的な海洋観測は旧日本海軍の水路部により始められた。水路部は海軍の組織の一つで、海図の製作や海洋測量、海象、気象、天体観測などを行った。民芸運動の創始者として著名な柳宗悦(やなぎ・むねよし)の父である柳楢悦(やなぎ・ならよし)は、長崎の海軍伝習所で勝海舟らとオランダ式の航海術を学び、明治になってからはイギリスの海軍に海洋測量技術を学んで、日本各地の港の測量をして海図を作成した。1885年(明治19年)に創立された初代海軍水路部長として、日本の海洋測量(水深、底質、海流、潮汐、潮流、波浪などの観測)の基礎を築いた。
潮位観測関係図(右)

 海洋観測は海岸に設けられた検潮場からスタートした。当時は、海中に量水標と呼ばれる物差しを立てて、海水の高さを目視で読み取っていた。1891年(明治24年)には全国6カ所に検潮場が設置され、観測技術も進歩した。1979年(昭和54年)頃まで、ケルビン型検潮儀が主に使用されていた。初期のものは鉛筆書きで、振り子時計のゼンマイを毎日巻いていた。現在はフロート式のほか、海中に沈めたセンサーの水圧変化で潮位をとらえる仕組みのものもある。潮位の記録もコンピュータなどによりデジタル化している。
 現在、潮汐の観測は気象庁、海上保安庁海洋情報部、国土交通省国土地理院所管、同北海道開発局などが分担する形で行っている。それぞれが所管する検潮所や検潮場は、全国に合計で約200カ所あり、データをリアルタイムで共有できるようになっている。それを元に、潮位の予測値(予報値や天文潮位ともいう)を計算して公開しているのが、気象庁の「潮位表」と海上保安庁の「潮汐表」である。
検潮所(左)

 ところで、潮位と山の高さを示す標高の関係をご存知だろうか。標高は東京湾の平均海面を基準としている。東京湾の霊岸島(現在の中央区新川)で、1873年(明治6年)から1879年(明治12年)まで観測して平均海面を求めた。土地の高さは、平均海面が基準だが、実用的には地上のどこかに、高さの基準となる点を表示しておく必要がある。このため、1891年(明治24年)に水準原点がつくられ、東京湾平均海面上24.5000mと決定されたが、1923年(大正12年)の関東大震災や、2011年(平成23年)の東北地方太平洋沖地震の影響による地殻変動が観測されたため改定を重ね、現在は東京湾平均海面上24.3900mと定められている。釣り人が気にする潮汐の話は、まだまだ続く。(つづく)





潮を釣る①
潮位の○○センチはどこから測ったもの?…海よりも深い潮汐表の話


※ノースアングラーズ2012年7月号「釣界潮解」に一部加筆

 かつて、釣り専門紙で勤務していたり、釣り団体の役員をしていた関係もあり、潮に関する質問を受ける機会が多かった。質問内容でとくに多かったのは、満潮や干潮の潮位や潮時についてだ。「潮を釣れ」とか「上げ7分、下げ3分」といった言葉もあり、釣れる釣れないは潮次第と思っている人は、かなり多いに違いない。比較的潮の干満の差が大きい太平洋岸の日高、襟裳方面の海岸でアブラコやカジカなどを狙って釣果を競う、いわゆる釣り会の貸切バスに何度も同乗したことがあるが、ここでも「干潮になると岩盤が現れるから、釣り座を前に移動して…」、「今日は大潮だし、満潮に向かう明け方が狙い目だろう…」など、潮がどうのこうのという話題から会話が始まるという感じだった。大会の日程も、潮回りで決めるほどだから、条件のいい週末は、釣りバスが大挙して釣り場へと向かうことになる。
 本州では、ウキ釣りによる磯釣りが盛んだが、こちらの潮への思い入れも相当なのものだ。20年ほども前に、宮城県の松島で磯渡しのクロダイ釣りを体験したときにも、地元のベテランは潮が一番いい地合(じあい)のときにだけ集中して、ポンポンと大きいのを数匹釣り上げ、「これで今日はおしまい」と、後はほとんど寝ていた。こちらはせっかくだからと、時間いっぱい粘ってみたが、技術が伴わないこともあって釣果はゼロ。潮とはこういうものかと思い知った。
 船釣りでも、釣果が芳しくないと船頭が「今日は潮が悪いな。二枚潮だ」などという。知り合いの船頭の釣れない理由の筆頭格は、「潮が悪い」で、こうなると潮も「おいおい」と苦笑いしそうだが、というわけで、釣り人の“潮信仰”は、衰える気配はない。
 こうした釣行の際に利用されているのが、潮汐観測機関が満潮や干潮の時刻、潮位などを予測して冊子やホームページで情報提供している「潮汐表」とか「潮位表」といわれるもので、その存在は釣り人ならほとんどが知っているだろう。しかし、その見方とか、その数値が何を意味しているかは意外に知らない人が多いようだ。だからこそ、よく質問を受けるのだろう。例えば、「潮位とか潮高が何センチとか、マイナス何センチとか載ってるけど、それはどこから何センチなの?どこかに目盛でもあるのだろうか」といった具合だ。私も、この質問を受けたときには、正直しどろもどろになってしまった。それがきっかけで潮について、少し調べてみようと思った次第。


(写真説明)
潮汐表や潮位表は釣り人の“潮信仰”のバイブルだ


 ちなみに、訓読みでは同じしおの、潮と汐ではどう違うのか。潮は朝のしおで、満ちしおという意味もある。汐は、逆に夕方のしおで引きしおだ。2つ合わせて潮汐(ちょうせき)、つまり1日の満ち潮と引き汐ということになる。日本語はなんと味わい深いことか。
 潮汐表や潮位表の潮位の予測値(予報値や天文潮位ともいう)は、長期間観測してきたデータから算出した大潮の平均的な干潮面(最低水面とか潮位表基準面ともいう)から何センチになるかを示している。釣り人は過去の潮位については、あまり関心がないと思うが予測値は、日頃の観測のたまものなのだ。
 この観測の歴史というのは、どう歩んできたのかということに、ふと興味が沸いた。「海洋研究発達史」(東海大学出版会、海洋科学基礎講座補巻、宇田道隆、1978年)の中に「潮汐研究の発達史」という項目があり大変参考になった。それによると、大潮や小潮現象の観測を初めて記録したのは、ポセイドニオスという紀元前の学者だそうで、このとき既に、月の満ち欠けと大潮と小潮の関係などについて分かっていた。世界最古の潮汐表は、ロンドン橋の満潮を示すもので1250年ごろからという。だが、潮の干満がなんで起こるかについては、分かっていなかった。その原理について解き明かしたのは、あのアイザック・ニュートン(1642~1727)である。潮汐表の話にニュートンまで登場してくるとは…えらいことになってきた。(つづく)



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