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北海道アングラーズペンクラブ  【2015年記事一覧】 


事務局 TEL 011-709-1873 E-mail info@tsuritomo.net
釣りの専門紙や雑誌など各種媒体に掲載された記事や、書き下ろしのエッセイなどを掲載。
※ 転載については許可を受けています。


祝ブリジギング15周年。積丹のブリ釣り先駆者は、ひょっとするとあのマッサン=H
 ブリは、全道的な釣り物になりつつあるようだ。以前は函館など道南の釣り物のイメージだったが、積丹方面、オホーツクの紋別、常呂、網走、太平洋の室蘭などでも狙えるようになった。この状況をみても、やはり地球温暖化によって、海水温が上昇し、暖流系の魚が北海道の海にも押し寄せているという説明を信じたくなる。もちろん、餌となるマイカ、オオナゴ、イワシなども豊富だからだろう。富山方面で真冬に獲れ、1匹10万円もする寒ブリは、まさに北の海が育んでいるわけだ。
 北海道でブリのジギングは、いつ頃から行われるようになったのか。1997年に、私がプロデュースした「北海道の釣り船ガイド」(北海道新聞社刊)には280隻の遊漁船が掲載されているが、この中でブリを釣り物にしている船は、函館や戸井の3、4隻しかなかった。戸井沖の釣り方は、胴突き仕掛けで、餌はサンマの1匹掛け。夜釣りが多かったようだ。シーズンは9〜11月とあった。おそらく道南が北海道ブリ釣り発祥の地なのだろう。
 ところで、余市のニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝は、釣りも趣味で、工場内の博物館には、竹鶴が積丹の日司沖で釣ったとする大きなブリを2匹手にした写真が飾ってあって驚いた。撮影年月日は忘れたが、余市工場は1934年がスタートだから、それ以降だろう。まだ若い頃の写真だったように思う。次に行ったときに確認したいと思うが、ひょっとすると積丹のブリ釣りの草分けは、マッサン≠ネのかも知れない。
 同じく私がプロデュースし、初代の編集長を勤めた「週刊釣り新聞ほっかいどう」は、1998年4月の創刊だが、1999年9月15日号には、函館沖でナブラを探してシンキングミノーで12`のブリを釣ったという記事が、最終カラー面扱いで大きく掲載されている。また、2000年の8月9日号には、積丹の幌武意沖で、ヤナギノマイ釣りの仕掛けにたまたま7`のブリが掛かったという記事が、これも最終カラー面で掲載されている。つまり道南でも、まだブリのルアー釣りが行われるようになって日が浅く、積丹においては偶然の釣り物扱いという状況がうかがえる。しかし、この年はブリの来遊が多く、釣り物としてにわかに注目を集めるようになった。同年の9月6日号の釣り船情報広告欄には、ブリジギングの有名船となった「仁成丸」がブリを8匹釣ったという情報を載せ、9月13日号には、ブリをジギングで1匹釣り、今後も期待できるとジギングに特化した内容を掲載している。同欄に、ブリの釣り物情報を掲載している船は仁成丸だけだった。さらに、9月20日号の最終カラー面に仁成丸に乗船した5人が積丹・無線塔沖でのデイジギングで8`級2匹を含み15匹を釣ったという体験記事が大きく掲載されている。記事を寄せたのは、仁成丸とともにブリジギングの普及に努めた余市の釣り具店主、川口卓氏で、「今年の日本海はブリ天国」の見出しが躍り、「魅了されてしまった」と、入門者としての感想が述べられている。使用したジグはピーボーイバーチカル、ジャックナイフなどで、重さは110〜200cだった。どうやら、商業ベースでの積丹のブリジギング元年は2000年といえそうである。もっとも、同時期に始まった夜釣りについては、ジギング一辺倒ではない。当初は、ジグでは釣れないと思われていたようで、2003年ぐらいまでの主流は、イカの餌釣り、テンテン。2004年辺りからテンテン、マスシャクリ、ジグ、餌の混在。2010年ごろまでこうした状況が続き、その後は専用ジグの普及もあってジグが主流になった。
 私は、ブリジギングが人気を集めるようになった頃、大病を患い、過激≠ネ釣りは、長らくご無沙汰だった。病は完治し、今年、そろそろ老体という年齢になって、デイジギングを3回、ナイトジギングを1回体験した。なじみの釣具店店員には、「無理しないで電動でやったら」と冷やかされながら、手巻きで頑張ってみた。デイは初回と2回目に、釣れない人もいる食い渋りの中、なんとか1匹ゲットした。3回目は、ゼロで、改めて難しさを味わった。その同じ日に、ダブルヘッダーでナイトにも臨み、寝不足と疲れで途中休憩しながらも8匹ゲットした。デイとはまったく釣り方が違う。ベタ底キープのマスシャクリ、タラシャクリの要領だ。乗船者の半数は年配者で、ソイ釣り用の竿と電動リールで14匹釣った初体験者もいた。この日は7人乗船で、竿頭15匹、全体で80匹の好漁だった。どうやら、私向きなのは、ナイトのようだ。
アブラコの増養殖の話―
釣り人の力で稚魚の放流ができないものかと思った。青森県の階上漁協は「アブラメ(アイナメ)」のふ化放流に成功し、釣り客誘致などで町おこしをしようと考えた。
(2015.8.7)
 標準和名アイナメ(地方名アブラコ、アブラメなど)は、ウサギアイナメ(地方名シンジョなど)、エゾアイナメ(地方名スナアブラコなど)、クジメ、スジアイナメ(地方名ハゴトコなど)の5種のアイナメ類の中で、ホンアブラコともいわれ、食味の点でも最上位にある。道内においてはロックフィッシュや、いわゆる釣り会の磯・投げ釣りのアブ・カジ族にとっても、メインターゲットであり、釣り人にとっては重要な魚種として位置付けられている。
 15年ほど前に、磯・投げ釣りの釣り会の全道組織である北海道釣魚連盟の事務局長をしていた時期があり、会員たちのライフジャケット着用促進などに取り組んだ。また、この釣り団体のメインターゲットでもあるアブラコやカジカ資源を維持していくために、独自に放流事業ができないものかと模索した。道内では、ヤマメ、ニジマス、ソイなどは稚魚を買ってきて放流している釣り団体があったが、アブラコやカジカの稚魚は売っていないので、独自に稚魚を育てるしかなかった。実現できれば、釣り団体としては、おそらく全国でも前例がない事業となるだろう。たまたま、高校時代の同級生が、漁業コンサルタントの会社を経営していたので、協力を仰ぐことになった。まず、産卵間近のオスとメスの親魚を生かしたまま確保しなければならなかった。知り合いの漁師や釣り人などに頼んでみたが、これが容易ではなかった。たまたま運よくアブラコのオスとメスがそろい、実験用水槽で人口ふ化に挑んでみたが、良い結果は得られなかった。経費の面でも、地方の一釣り団体が単独で行うようなレベルではないことも分かり、各種文献、資料に基づいた生態、全国に数例ある増養殖の実態などについての報告書としてまとめられるにとどまった。
 アイナメは、体長5〜7aで浮遊生活から底生生活へ移行する。その後の生活は不活発で定住性が強い。岩や石に腹部を接触させて生活し、周年ほとんど移動しない。群れをつくらず、単独生活で「縄張り」を持ち、進入してきた魚には激しく攻撃する。1年で11〜13a、2年で17〜21a、3年で24〜29a、4年で30〜38aに成長する。50a級ともなると、相当な年数を生きていることになる。雄は1歳、雌は2歳で成熟する。産卵期は9〜11月(旬は5〜7月)で、適水温は11〜17度Cである。一産卵期に数回産卵する。産卵直前の卵巣は完熟卵と成熟途中の未熟卵の2つの部分に分かれている。まず、完熟卵が一度に産出される。続いて残る未熟卵もほぼ同数ずつ繰り返し完熟しては産卵され、同じ産卵期にすべて産出される。1回の産卵数は、体長27aで8000粒程度で、総産卵数は約5万粒に達する。産卵場は水深20〜30bの岩礁帯あるいは転石帯、雄は潮通しがよく透明度の高い場所を確保し、雌に求愛して岩のくぼみや海藻の基部に産卵させる。雌は産卵後すぐに産卵場を離れる。雄は胸鰭で海水を送ったり、卵を食べにくる魚を威嚇して、ふ化までの約1カ月間保護を続ける。卵の色は固体よってさまざまであり、いろいろの色の卵塊をオスが守っていることも観察されているので、雄が求愛して産卵させる雌も複数いると考えられている。「イクメン」だが、案外「浮気者」なのかもしれない。卵を食べにくる魚にはアイナメの未成魚や雌も多い。
 水産関係機関によるアイナメの種苗生産は、東京都水試で昭和37〜40年、兵庫県水試で昭和38年、岡山県水試で昭和44年に、鹿部町にあった北海道立栽培漁業総合センター(平成18年から室蘭市の北海道立栽培水産試験場に統廃合)で昭和47〜51年、徳島県農林水産技術センターで昭和58〜61年に行われたが、量産技術の確立までに至らなかった。問題点としては、徳島県農林水産技術センターでは、ふ化後20〜30日目の斃死が大きな問題で、受精からふ化まで長期にわたる卵管理、および生物飼料の改善が必要としている。北海道立栽培漁業総合センターでの種苗生産試験は、鹿部漁協青年部と組んで行われた。鹿部から砂原沖にかけてのアイナメの産卵時期は、9月下旬〜11月下旬で、盛期は10月下旬〜11月初旬(水温14〜15度C)である。全長30〜40a、全重量400〜800cの親魚から採卵して受精させた。ふ化までは約30日かかり、発眼率はほぼ100%だったが、ふ化率は70〜90%だった。飼育水温は平均11度C前後が成長、生存率ともよかった。ふ化後5〜6日で摂餌を開始したが、仔魚前期から後期かけて大量の減耗が起きた。ふ化後62日で19・4_に達し、ふ化後4ヶ月まで飼育できたが、生存率は極めて低かった。種苗生産は初冬から始まる。この時期には初期餌料となるクロレラ、ワムシ、チグリオパス等の増殖が著しく鈍くなり、計画的な給餌に困難をともなった。種苗生産上の問題点として仔魚期りーの大量減耗があり、これは餌料を中心とする飼育管理に問題があるとされている。北海道栽培漁業公社によると、鹿部漁協はアイナメの活魚が、一時期本州方面で注目されていたこともあり取り組んだが、魚価などの問題があって、現在は活魚による出荷も行われなくなり、種苗生産も試験段階で終わった。道内では、これ以外にアイナメの増養殖に取り組んだ事例はないという。
 高校時代の同級生が営む漁業コンサルタント会社が2003年(平成15年)10月にまとめた報告書によると、アイナメは人工的に卵を受精させて種苗生産、つまり稚魚を生産させるのは、なかなか難しいということが分かった。しかし、天然の稚魚から育てる養殖については、愛媛県三瓶湾(みかめわん)で行われているとあった。種苗は中国からの輸入で秋の産卵時期を中心に導入されているが、12月の後半になることもあった。天然魚のためサイズのばらつきが大きいが(体重120〜400c)、平均200c前後である(2歳魚と推定される)。種苗導入から出荷までの歩留まりは平均80%前後だが、種苗の良し悪しで60〜90%までの幅があり、いかに斃死率を下げるかが、アイナメ養殖成功の鍵となっている。飼育施設は、三瓶湾の場合、海面養殖ヒラメの空きいけすを利用している。6×6×3bで4000〜4500尾を収容する。餌もヒラメと同様のモイストペレット(生魚と粉末配合飼料を混合し粒状にした飼料)を給餌している。以上が当時の報告書の内容だが、現在はどうなっているのか。関係機関らしきところに当たりをつけて聞いてみた。愛媛県の八幡浜(やわたはま)漁協三瓶支所に聞いたところ「養殖は行っていない。地元ではメジャーな魚ではない」とのこと。マダイなどの養殖で知られる愛媛県宇和島市の愛媛県農林水産研究所水産研究センターにも聞いてみたが、やはり「今はないと思う。もともとアイナメの漁獲がないところ」という。メジャーな魚ではないのになぜ?という疑問には、「養殖技術が優れているので、多様化の一環として、目新しいものを入れてみたのかも」ということらしい。当時の事情を詳しく知る人には行きつけなかった。アイナメ養殖は短期間で終わったのかもしれない。
 稚魚のふ化放流事業については、青森県の階上(はしかみ)町の階上漁協が、1992年(平成4年)から2005年(平成17年)まで行っていた。平成4年の11月から、 (公社)青森県栽培漁業振興協会の松橋聡さん(現在、栽培部長)によって始められ、その後漁協で行い、多くの成果が発表されている。詳しい内容については、階上漁協増養殖研究会「第39回青森県漁村青壮年女性団体活動・実績発表大会資料」(平成10年1月)などに掲載されており、PDFがネットからダウンロードできる。アイナメは、北海道ではアブラコと呼ぶように、階上町ではアブラメと呼び、1994年(平成6年) に「町の魚」に制定されている。階上漁協によると、「アブラメは、キロ当たり1000円と、ヒラメとほぼ同じ価格で取引されている高級魚」という。このアブラメをブランド化し、釣り客などの観光客の誘致を推進するのが、事業の主な目的だった。稚魚の生産は、「天然の卵を、アワビ採りやウニの移植作業中に採集して使用しました。人工採卵・受精も試験的に行ったことがあり可能ですが、天然採集の方が簡便でした」(松橋聡栽培部長)という。放流数は、前出の発表資料によると平成5年7600匹、同6年2800匹、同7年2340匹、同8年1万3000匹、同9年7000匹となっている。平成5〜8年は比較的小型の稚魚だったが、同9年には70_以上の大型を放流できるようになった。「放流種苗の一部を八戸漁連種苗施設で約3年ほど飼育し、市場に試験的に出荷したことがあり、ヒラメより高値で販売されたと記憶しています(松橋部長)」ともいう。階上漁協のアブラメの漁獲数量も、平成5年の4152`から平成9年の9312キロへと飛躍的に伸びた。こうした取り組みをマスコミも取り上げ、釣り客も増えた。平成8年には4500人ほどが、階上町を訪れるようになった。平成8年からは標識放流を行い、ポスターやチラシで漁業者や釣り人に再捕報告の依頼をしたり、15a以下(当歳魚)は再放流するよう呼びかけた。平成8年8月に約90_で放流した稚魚が約2カ月後に約16aで再捕され、成長が極めて早いことも分かっている。階上漁協の種苗生産は比較的小規模だったので、資源の増大に直結したとまではいえないようだが、漁業者の資源管理面での意識改革や、町のPRにおいて一定の役割を果たしたとされている。しかし、残念ながら現在は行われていない。
 「アブラメの種苗生産で難しい所は、一般の魚類より餌料プランクトンの栄養強化が必要なことです。寒流系の魚類なのでDHAやEPAの要求量がヒラメやマダイ等の暖流系魚種より多いことです。おいしい魚なので増殖に務めたいのですが、アイナメは、地域によって価値が大きく違います(青森県内においても)。現在の技術では大量種苗生産が可能と思われますが、資金の調達がうまくいかず、生産を中止している状態です」(松橋部長)。今や、釣りは多くの魚種で、ふ化放流の恩恵を被っているが、アイナメについては、すべて天然物というわけである。乱獲防止や小さな魚のリリース以外には、資源維持の手立てがないということを、分かっていただけたらと思う次第である。
ウグイ、ガンジ、ドンコ…食べてますか?釣りは食育最前線
(2015.8.7)
 料理次第ではおいしいのに、うとまれている魚の代表格はウグイだろう。
先日も、石狩湾新港でチカ釣りをしていたファミリーの竿に、ウグイが掛かって、「持って帰って食べる」と言う子供をお母さんが「だめ!食べられないんだから」と叱っていた。こういう光景を何度見てきたことか。ウグイはコイ科の魚で、標準和名ではウグイ、エゾウグイ、マルタの3種類いるが、まとめてウグイと呼んでいる。産卵期にはお腹が赤くなることからアカハラとも呼ばれる。海でも川でも釣れる。リリースするとまた釣れるからと、港の岸壁などに放置され、カラスやカモメのエサになったりする。北方領土のビザ無し渡航で、あちらの家庭を訪問した人が、食卓でウグイを当たり前のように食べていて驚いたという。北海道でも昔はサケ、マスと同じように漁の対象になっていて、アイヌの人々などの貴重な食料だった。「北海道の全魚類図鑑」(北海道新聞社刊)にも、冬から産卵期にかけては美味と書いてある。敬遠されるのは生臭いとか小骨が多いといった理由のようだが、本当はみんなが食べないから、という風評被害ではないだろうか。
 (財)北海道栽培漁業振興公社の機関誌「育てる漁業」(平成21年2月1日429号)には、「ウグイを食べる…嫌われ者の復権を願って」と題する記事が掲載されている。もっとウグイを利用しようとの趣旨で料理法などについて分かりやすく解説している。同公社のホームページにものっているので、ぜひご一読を。
 以前テレビで、シラミカジカ(標準和名オクカジカ)が話題になっていた。漁業資源としてもっと利用しようという内容だった。すり身などにするとうまいという。苫小牧辺りから東の方でよく釣れる。釣れすぎて嫌になることもある。50センチほどに育つが、頭がでかい割りに胴はスリムで、いまいち食欲をそそらない。みそ汁にしてもいいダシが出るのだが、ご近所に差し上げても喜ばれないから、自分の分だけ確保して海に戻すことになる。それにしても、シラミカジカとはありがたくない名前だ。体色がシラミがたかっているように見えるからか。
 見た目が悪かったり名前がダサい?と、不人気になりがちだ。ドンコ(標準和名エゾイソアイナメ)もそうである。日高沿岸から南の方でよく釣れる。大きいのは40センチほどになる。おたまじゃくしのお化けのような体系。黒っぽくて、ぬめぬめしている。夜行性で夜釣りでよく釣れる。懐中電灯に照らされた姿はますますグロい。しかし、一皮むけば白身で上品。冬季が旬で、内臓ごと鍋物にするといいダシが出てとてもうまいのだ。焼き物や干物などにもする。
 「どんこ汁」は東北・三陸沿岸の郷土料理だ。青森県の階上(はしかみ)町では、毎年11月中旬に汁を無料でふるまうどんこ祭りも開催されている。すすきのの知り合いの板前は、釣り人に捨てないようにせがんで、店で汁物に使う。どんな魚か知らず「うまい!」と感動している客を前にニヤニヤしている。せっかくエゾ…という名前がついているのに、地元で知る人ぞ知るではもったいない話である。
 あのゴッコ(同ホテイウオ)だって結構グロいけど、今はすっかりメジャーになりスーパーでも見かけるようになった。若い女性が、コラーゲン効果で肌がつるつるになると喜んで食べている。名前がかわいい?から救われた。ドンコも「エゾッコ」なんて名前だったら少しはましだったかも。販売用の名前もあっていい。
 アブラコ(同アイナメ)は本州では寿司だねにもなる高級魚でキロ当たり何千円もするという。北海道では刺身ではあまり食べない。ガヤ(同エゾメバル)もそうだ。これらは運賃をかけても本州で高く売れるので、こちらで無理に売る必要がないのだろう。地元にせっかく美味しい魚があるのに、外国から抗生物質まみれの養殖のサーモンなどを輸入して食べている。かくして水産物の自給率は低迷したままだ。そんな国でいいはずがない。
 反省を込めて、釣り人も折角釣った魚をもっと食べてみるべきだろう。活魚を売り物にしたすすきのの居酒屋の水槽にはフサギンポが泳いでいた。刺身になるという。タウエガジ科の魚で、仲間にはワラズカ(標準和名はナガヅカ)などという魚もいる。ワラズカは白身魚でかまぼこの高級原料(卵巣は有毒なので注意)だ。釣り人はこれらはまとめて、ガジとかガンジなど呼ぶ。釣れると眉間にしわを寄せ、蹴飛ばして海に返してしまう。私は持ち帰って、天ぷらにして食べたが、見た目とは違って実に上品な味だった。


すすきので活魚の刺身用となっていたフサギンポ


 最近テレビで深海魚を釣ったり食べたりする番組をみた。人気番組のようだ。私も同じような経験がある。北海道で最も深い場所で行う釣りは、太平洋の苫小牧沖などでのメヌケ(標準和名はオオサガ)釣りだ。水深は700メートルくらいある。釣り糸が1000メートルも巻いてある大きな電動リールを使う。釣り道具をそろえるだけでも30万円ぐらいかかるマニアックな釣りだ。7、8キロもあるような高級魚のメヌケが釣れたら大喜びだが、そうとは限らない。船頭がカラスハモ(標準和名ほらアナゴ)と呼んでいた1メートルもあるような黒いアナゴも釣れた。脂がのっていて結構うまかった。頭でっかちのサメのようなオニヒゲという魚は、刺身で食べたら見た目も味もほとんどマダイだった。深海にはまだまだ未知の資源が眠っている。
 釣り人は、地元の魚の良さを知っている。魚離れが問題になっているが、子どもの頃から釣りを体験すれば知識が身に付き食べるようになる。まさに食育の最前線だと思う。
2014〜2015 釣りと魚と環境、この一年<下>
猛暑、豪雨、突風、暴風雪、高潮…気象の変化に翻弄。暖流系の魚は豊漁、寒流系は不漁が定着?

 <中>では、海での釣りの事故について書いたが、淡水での事故も侮れない。2015年の2月21日、茨戸川の氷上で、ワカサギ釣りをしていた人が氷が割れて転落し、けがをするという事故があった。たまたま現場にいたのだが、消防や警察も出動した。警察官は、まだ氷上にいる釣り人に非難するよう呼びかけていた。例年2月末までは氷上にのれるが、年明けは気温が高めだったことから、特に道央圏の釣り場は氷が早く解けた。白老のポロト湖や苫小牧の錦大沼も短期間で終了した。茨戸川については、近年旅行会社が、体験観光の客を、多いときには1度に数10人も送り込むようになった。安全対策や観光振興のためにも、きちんと管理された釣り場として開放されるのが理想だろう。関係者の前向きな協議と英断を期待したい。3月には、雪解けの進んだ釧路市の音別川で、釣り人が流され死亡している。淡水での釣りではあっても、ライフジャケットの着用をはじめとする安全対策には、細心の注意で望んでほしい。
 2014年の道内の気象状況は、網走の海明けが3月7日で平年より13日、一昨年より6日早かった。今年は3月3日に明けたので、昨年よりさらに4日早まったことになる。一昨年、昨年ともに平年より流氷量が少なかったことなどが原因だ。気象庁は今年2月の流氷面積は、1971年の統計開始以来、最も小さくなっていると発表した。その一方で、オホーツクから流れ出た流氷が、羅臼〜標津沖に押し寄せてマダラ漁などに打撃を与えた。羅臼から流氷が目視できたのは20年ぶりという。道内は6月初旬が猛暑で、その後は下旬にかけて記録的な長雨となった。その後は一転してカラカラ天気が続き、降水量が道内各地で平年を大きく下回った。8月はまた記録的な大雨で、礼文町では土砂崩れにより女性2人が亡くなった。広島市で多くの住民が亡くなった土砂災害も8月だ。9月には十勝で豪雨による土砂崩れがあり、サケ釣り客の車約60が一時孤立した。10月28日、札幌に初雪が降った。2013年より11日早かった。11月中旬には、苫小牧で突風により建物が飛ばされるなどの大きな被害が出た。12月中旬には暴風雪により、根室で高潮による災害も起きた。
 <上>で触れたサケ、マスを除く豊漁、不漁では、道東のサバやマイワシが豊漁。サバは増えたが、小ぶりで半分以上がミール向け。マイワシは2014年11月初旬、鵡川漁港や浦河港に大漁に漂着して話題になった。マイワシの死骸で漁業被害が起きたり、処分費用に数億円もかかったという。ブリは、日本海を北上して宗谷海峡からオホーツクを抜け、6月下旬には羅臼の定置網にも入った。羅臼沖での水揚げ高は過去最高となる1億円を突破した。羅臼沖では餌となるマイカが豊漁ということも関係しているという。羅臼沖のマイカはここ数年豊漁で、獲れすぎて水揚げを制限するほどだった。一方、函館などの道南では不漁だった。道東のサンマは低迷。とくに出だしの7月、8月が大不漁で、札幌のデパートては1匹980円の値が付いた。スケソウダラ、シシャモ、ホッケは不漁。ホッケは価格が上がって、居酒屋で開きが高級魚並みになったとか、動物園で餌として使えなくなったなどと、マスコミも盛んに取り上げた。ニシンは、2015年に入って石狩湾や厚岸で豊漁でやや回復傾向にある。暖流系の魚が豊漁で、サケをはじめとする北の魚が低迷していることに、マスコミも2013年までは異変≠ニして取り上げていたが、2014年はあまり見かけなかった。こうした状況が当たり前≠ノなりつつあるようだ。
 ニホンウナギが2014年6月、太平洋クロマグロは11月に絶滅危惧種に指定された。道漁連は、道産秋サケについて、海の生態系を守る漁業に与えられるMSC認証の取得を断念した。取得すると輸出に有利だが、不漁で輸出量も減り、大きなメリットがないと判断したようだ。釣り人にとっては、放流物でも安定しておこぼれに預かれることがいいに違いない。 2014年、虫類川のサケ・カラフトマスの有効利用調査が20周年を迎えた。利用者にあたる調査員はピーク時に約9000人だったが、2014年は約1700人と過去最低となった。かつて4つあった道内の有効利用調査河川も、昨年実施されたのは虫類川と浜益川のみ。これも不漁が大きく影響しているのはいうまでもない。 外来種のニジマスは、規制問題でかつてない危機に見舞われている。猿払川のイトウは、国立環境研究所により、生息数が安定的に保たれているとの調査結果が発表された。
 日本各地でダイオウイカやリュウグウノツカイが発見されて、深海ブームが起きた。札幌・円山動物園では2015年1月に道内初となるダイオウイカの冷凍標本も展示され話題になった。一方で、深海魚の体内のプラスッチックやビニール袋などのゴミが見つかり、問題視されている。東海大学海洋博物館の調査では、深海魚のミズウオの8割から見つかった。餌と間違って飲み込んだのだ。いずれ人間が食べる魚にも影響が出てくると、研究者は警告している。
 著名な経済人だった久末聖治さんが、2014年11月に67歳の若さで亡くなった。父親の故・久末鉄男さんは日釣振北海道地区支部長も務めた人。親子2代の釣り好きとして知られ、釣り振興にも理解があった。以前、経営していた奥尻島のホテルで酒を酌み交わしたり、一緒にサクラマス釣りを楽しんだことが忘れられない。ご冥福をお祈りしたい。

2014〜2015 釣りと魚と環境、この一年<中>
26年の道内の海釣り関係の事故は死亡・行方不明が14人と高水準。港・海岸での事故者ライフジャケット着用率は低下傾向

 第一管区海上保安本部は、平成26年に道内の港や海岸で起きた釣り中の人身事故や、プレジャーボートなど船舶の釣り関連事故についてまとめた。一覧表はこちら>>>
港や海岸での事故者数は20人で、このうち港での発生が15人、海岸は5人だった。事故が最も多かった月は7月と11月で、各4人だった。次いで9月と10月の各3人となっている。港別の件数は、苫小牧港が3人、石狩湾新港、小樽港、釧路港が各2人で、都市部に近い大きな港での事故が目立った。やはり、釣り場として人気があり、釣り人も多いからだろう。港での事故原因は、ほとんどが防波堤や岸壁上で突起物などにつまずいたり、誤って足を踏み外したりしたことによる海中転落だ。中には、釣り中に車を移動させようとして車ごと転落したというものや、遊漁船に岸壁から乗り移る際に足を踏み外して海中に転落したり、転倒してけがをしたというケースもある。
 海岸での事故は、磯場や河口部の雪庇(せっぴ)からの転落のほか、立ち込んでいるうちに深みにはまったり、岩場で高波にさらわれたりしたというものだった。20人中、死亡・行方不明者は8人で、港では15人中5人、海岸では5人中3人だった。20人中、ライフジャケットを着用していたのは2人。死亡・行方不明者8人中、未着用者は7人だった。11月に石狩湾新港で海中転落した人もライフジャケットを着ておらず、たまたま付近にいた人たちに助けられなければ危ないところだったという。衣服が濡れて重く4人がかりで引き上げたそうだ。岸壁から落ちたら、階段でも付いていない限り、1人ではい上がるのはまず無理だ。ライフジャケットを着ていなかったり、着ていても北海道の場合は冬場に落ちて発見されなかったら、低体温症により短時間で命取りとなりかねない。水中での生存可能時間は水温0度Cで15〜45分、0〜5度Cで30〜90分といわれる。死亡・行方不明者の多くは、夜間に単独で釣りをしている。これも、発見が遅れる要因になっているようだ。平成22年〜25年の事故者数(カッコ内は死亡・行方不明者数)は、22年11(4)、23年18(6)、24年22(13)、25年23(11)で、26年はやや減ったが依然高水準だ。
 同海保によれば、事故者のライフジャケット着用率は、平成17年から21年までの5年間が約26%なのに対し、22年から26年の間では約20%に低下している。また、事故者のうち、死者・行方不明者の着用率は、生存者の着用率の4分の1以下で、「ライフジャケットの着用、未着用が生死に直結することは明白」と警告している。
 一方、プレジャーボートや遊漁船による釣り関連の海難事故は、23件で、このうち6月中の発生が6件で最も多く、次いで5月の4件だった。死亡・行方不明者は6人で、とくに6月7日には岩内・雷電沖でプレジャーボートが転覆して3人が死亡、1人が行方不明となり、同じ日に石狩沖でもボートが転覆して1人が行方不明となった。プレジャーボートによる死亡・行方不明者数は22年から毎年0〜1人で推移していただけに、残念な年になってしまった。(以下次号)


2014年5月4日、小樽港港口付近で、プレジャーボートが強風によって船内に海水が打ち込み浸水し転覆。小樽海上保安部により3人が救助された(写真は第一管区海上保安本部提供)

※沿岸域情報提供システム MICS…海上保安庁では、プレジャーボート、漁船等の船舶運航者や磯釣り、マリンスポーツ等のマリンレジャー愛好者に対して、インターネットホームページ等により、気象・海象情報や安全情報等を分かりやすく提供しており、誰でも簡単に利用できる。また、事前登録することで利用できる「緊急情報メール配信サービス」は、選択した情報がメールで配信されるので、外出先でも緊急情報をいち早く入手できる。津波防災対策ツールの一つとしても利用できる。情報料や登録料は無料(通信費は別途)。平成27年7月からスマートフォン用webサービスの運用も開始する予定で、スマートフォンにGPS機能があれば、現在位置付近の各種安全情報を地図上で分かりやすく確認できる。
2014〜2015 釣りと魚と環境、この一年<上>
異業種量販店の釣り具ネット参入で、既存小売店は戦々恐々
サケはまずまずだが、カラフトマス釣りは消滅の危機!?
「豊平川カムバックサーモン」は新たなステージへ

 毎年、釣りの業界紙の新年号にはメーカー、問屋、小売量販店の社長や、釣り団体の代表など、いわゆるお偉方の「年頭所感」が顔写真入りでずらりと並ぶが、 近年の内容はけっして明るいものではない。2015年年頭の内容もしかりで、「釣り人口減」、「少子化」、「天候不順」、「消費税引き上げ」、「製品値上げ」、「ネット販売拡大」、「異業種量販店参入」、「物流システム問題」、「人手不足」、「店頭での事務処理煩雑化」、「小売店減少」、「釣り場消失など環境悪化」、「万引き問題」…等々、危機感にあふれている。
 2014年はとくに、異業種であるヨドバシカメラが、店舗を生かした釣り具のネット販売に参入したことで話題になった。現在、釣り具市場の6、7%がネット販売により占められているといわれ、10%を超えるのも近いという。しかし、ただ商品をアップしているだけでは、もはや売れる時代ではない。ネットにおいても、いかにその製品について、提案、訴求していくかという販売力が問われている。まして、リアル店舗はそれこそが存続の要だ。地域に密着し、釣り場やテクニック、釣り具に精通した従業員が、価値ある情報を客に提供して信頼関係を構築し、ファンになってもらう。これは、原点に立ち返るということでもある。そして、あらゆる手段を用いて情報を発信し続けることだ。釣り情報に携わる者として感じるのは、手前みそだが「情報は、ハリ、糸、さおに匹敵する大切な釣り具」が持論である。「情報を聞くだけでいいですよ。見るだけでいいですよ。トイレを使うだけでもいいですよ。気軽に立ち寄ってください」という店がどれほどあるだろう。年頭所感で、ある小売チェーン店の経営者が「スター店員を育てよう」と書いていたが、また会いたくなるような魅力ある人材は店の宝だ。人は、楽しいところ、にぎやかなところに自然に集まってくる。売り上げはその先にあると思う。
 さて、魚の話に移ろう。(独)水産総合研究センターの平成26年(2014年)11月30日現在のカラフトマス来遊状況(最終報)によると、北海道における来遊数は、158万尾で、前年同期の49%、平年同期(平年は平成元年〜平成25年の平均値)の18%だった。偶数年の平成26年は不漁年に当たるが、平成に入ってから最も少なかった平成24年(2012)年の来遊数221万尾を下回り、さらに200万尾を割り込んだのは昭和61年(1989年)以来となる。158万尾という来遊数は、30年ほど前の水準に近いという。ふ化放流のための採卵数も目標の1億7000万粒に対して1億3200粒で78%の達成率だった。カラフトマスは釣り人にとって、ますます貴重な1匹となりそうだ。一方、北海道のサケの来遊数は、平成26年(2014)11月30日現在で、3497万尾で、前年同期の83%、平年同期(平年は平成元年〜平成25年の平均値)の77%だった。地域別では、日本海側(オホ−ツク海区及び日本海区)は、1792 万尾で前年同期の74%、平年同期の93%、太平洋側(根室〜えりも以西海区)では1705万尾で前年同期の96%、平年同期の65%となっている。全体としては良い数字ではないが、サケ釣りシーズンに、えりも町の有名ポイント歌別漁港について、いつも情報提供してくれる釣具店や、網走方面の情報を提供してくれる地元釣具店は、「今年は釣れている」と言っていたし、知床のウトロ、十勝、釧路沖の船釣りも好調だったので、釣り人にとってはまずまずだったようだ。
 サケにまつわる話では、札幌・豊平川のカムバックサーモン運動(1978年から2005年3月まで27年間継続)は、かつて日釣振北海道地区支部長を務めた故・吉崎昌一氏が中心となって推し進めた。運動の推進母体だった「さっぽろサケの会(後に、北海道サケ友の会)」の解散後は、同じく日釣振北海道地区支部長だった木村義一氏が代表を務める「北海道サーモン協会」が設立されて活動を引き継ぎ、「サケをシンボルとして環境保全に努める」の理念の下、「サケに関わる文化を広め、子供たちに豊かなふるさとを残していくことを目標に」、この10年、国際交流、市民講座など市民と触れ合う参加型イベントに取り組んできた。しかし、同会も2015年度(2016年3月)をもって解散することになった。会員の減少、資金難、役員の高齢化などに直面したというのが、直接の理由だが、一定の役割を果たしたということだろう。だが、その活動のDNAは、旭川地区でのサクラマス、サケの遡上復活の運動にも受け継がれ、成果を上げるようになった。豊平川においては、7割のサケが野生化し、新たに「札幌ワイルドサーモンプロジェクト」という市民運動も産声を上げ、話題になっている。サケの命と同じく、こうした市民の情熱も脈々と受け継がれていく、そんな思いを抱いた1年だった。

釣り魚の寄生虫について−C
クロソイの「ゴマ」は煮ても焼いてもお手上げ。「スイカの種」はサケを跳ねさせる?

アニサキス、シュードテラノーバ、顎口虫(がっこうちゅう)といった線虫類、扁形動物に属する吸虫類や条虫類(いわゆるサナダムシ)など、前回までは魚の生食によって人体に入り、時には重い症状を引き起こす寄生虫について書いてきた。今回は、人体には影響はないものの、見た目が悪い、気持ち悪いなどの理由で消費に悪影響を及ぼしたり、養殖業者を悩ませたりしている寄生虫についてふれてみたい。
 ソイ類は釣り人に人気があるが、とくにクロソイに多く見られるのが、「ゴマ」と呼ばれる寄生虫だ。この寄生虫は、表からはなかなか分からない。食べようとしてさばいたときに、白い身の中にゴマを埋め込んだように入っていることで、初めて分かる。大きさは1〜3ミリ。1つ2つなら、ほじくり出せばいいが、ときにはびっしりと入っていることもあって、こうなるとお手上げだ。研究機関の調査では、天然魚の1匹の体内に1000個以上も入っていたケースもあった。ある居酒屋の店主は、何千円も出して立派なクロソイを仕入れたところ、大量にゴマが入っていたという。人が食べて害があったとの報告はないそうだが、厄介なのは、刺し身はもちろん、煮ても焼いても、見た目が変わらないことだ。気持ち悪くて売り物にならないので、結局、捨てざるを得ないのだ。「これだから、クロソイは嫌なんだ。仕入れには勇気がいるよ」と悔しそうに話していた。仕入先にはクレームの元ともなるだろう。北海道では、日本海産の物に多く、太平洋産には見られないというのも特徴だ。私の経験では、日本海側で釣ったガヤやアブラコに入っていたこともある。シマゾイにもいるようだが、マゾイやハチガラなどに入っているのは、まだ見たことがない。また、冬場にはなくなるという説もあるが、実際はなくならないというのが研究者の見解だ。
 この虫の正体は、扁形動物吸虫類の一種であるリリアトレマ・スクリジャビニという寄生虫だ。「ゴマ」は、まだ発育段階の幼虫でメタセルカリヤと呼ばれる。この幼虫が魚の筋肉中に入ると、異物反応により袋状に覆われ、袋にメラニン色素が沈着してゴマのように見えるのである。黒い皮を剥がすと、中から白い半透明の幼虫が出てくる。メラニン色素だから、煮ても焼いても黒いままなのだ。
 この虫の生活史は、成虫がヒメウやセグロカモメから見つかっており、まず卵が糞ととともに排出される。海中で卵から孵化した幼虫が第1宿主(何かはまだ分かっていないという)に寄生する。そこでセルカリアと呼ばれる幼虫となって海中に泳ぎだし、次に第2宿主のクロソイなどに寄生してメタセカリアとなる。それがヒメウなどに食べられ成虫となると考えられている。この虫は海中で養殖したクロソイにも寄生する。商品価値が下がることから、薬剤による駆虫も研究されているようだ。
 釣ったサケやカラフトマスの表皮、とくに肛門と尻鰭近くに、黒いスイカの種のような物が付着しているのを、よく見かける。大きい物では15ミリに達する。これは節足動物のカイアシ類であるサケジラミだ。手ではがそうとしても、結構な力でしがみついている。体表にいるので、間違って食べるようなこともないので、人には影響ないが、サケの皮膚をかじり取って食べ、寄生を受けた部位の皮膚はただれて出血する。とくに養殖サケは頭部に寄生されやすく、ひどい場合には皮膚がはげて、頭蓋骨が露出することもあるという。傷口からは細菌も進入して魚体に影響を及ぼす。養殖の盛んなヨーロッパでは、養殖サケの20%がサケジラミによって失われているとの推定もあり、事態は深刻だ。サケが跳ねるのは、サケジラミの寄生とも関係があるらしい。跳ねることで、サケジラミを振り落とそうとしているのかも知れない。跳ねがあることで、釣り人は心が躍るが、サケにしてみれば、痛いやら痒いやらで大変なのかも知れない。


スーパーの店頭で見つけたサンマに付いていたサンマヒジキムシ。両側に2匹付いていた

 サンマは釣りの対象にはあまりならないが、スーパーで売られている物の表皮に、4〜5ミリの穴が1つ、2つ開いているのに気付いたことはないだろうか。これも同じくカイアシ類のサンマウオジラミ(大きさは5ミリ前後)が、食らい付いて開けた穴だ。サンマの鱗は落ちやすいので、漁獲されたときに大部分が脱落する。穴は体側部の下側に多い。また、長さが5センチ以上もあるサンマヒジキムシ(カイアシ類)が付いていることもある。この虫は大発生しては、忽然と姿をくらましてしまうなど、まだ謎が多いようだ。最近、スーパーの冷凍解凍物のサンマの中に、この虫が死んだまま食らい付いているのを見つけた時には驚いた。神様が寄生虫の話を書いているので、プレゼントしてくれたのかもしれない。サンマには、焼いた物を食べている時などに、腹の中に10〜30ミリぐらいのオレンジ色の細長い物がいるのを見つけることもある。これは鉤頭虫(こうとうちゅう)のラジノリンクスだ。食べたらおいしいサンマは、寄生虫の世界から見てもなかなか味わい深いのである。
 このほかにも、魚には実に多くの寄生虫がいる。魚には、寄生虫がいるものと思った方がいい。寄生虫がいるのは、むしろ自然で毒されていない証拠でもあろう。むやみに恐れたり、売っている人に八つ当たりせず、知識を深めて上手に付き合っていただきたい。

※参考文献、HP=「さかなの寄生虫を調べる」(成山道書店、長澤和也)、「魚介類に寄生する生物」(成山道書店、長澤和也著)、「改定・魚類学概論第二版」(恒星社厚生閣、小川和夫・室賀清邦編)、北水試だより第61号・クロソイに見られる「ゴマ」について(三浦宏紀・伊藤慎悟)
釣り魚の寄生虫について−B
美女の腸内で数メートルに成長した日本海裂頭条虫。人体内を這い回るエイリアン顔負けの顎口虫など顔ぶれは多彩

激しい腹痛で七転八倒するアニサキス症は、生魚を食べる日本が再多発国だ。釣り魚に寄生する寄生虫の中では知名度も抜群。いわばスーパースターである。。アニサキス以外に、水産動物を介して人体に影響を及ぼす寄生虫にはどんなものがあるのだろう。



 扁形動物に属する吸虫類は、コイ、アユ、ヤマメなどの淡水魚や、ボラ、マハゼなどの汽水魚、サワガニ、モクズガニなどの淡水系甲殻類に寄生する。釣りに関係しそうな代表的な吸虫を挙げてみた。発見者の名を冠した横川吸虫(アユ、ウグイ)、宮田吸虫(アユ、ヤマメ、ウグイ、シラウオなど)、高橋吸虫(コイ、フナ)は、人間の小腸に寄生する。多数寄生すると下痢や腹痛を引き起こすこともあるが、重症になることはなく、駆虫薬による治療が可能だ。異形吸虫(ボラ、マハゼなど)も同様の症状を起こす。棘口(きょくこう)吸虫(アユ、フナ、ドジョウなど)も腸に寄生し、感染すると腹痛、下痢、発熱 などの症状がみられる。糞便検査で診断し、駆虫剤で治療する。
 肝吸虫(コイ、フナ、ワカサギなど)は、古くは肝臓ジストマと呼ばれていた。少数の寄生ではほとんど症状は出ないが、多数寄生すると胆管が詰まって、胆管炎や肝機能障害を起こし、慢性になると胆管細胞がんになることもあるというから、結構恐ろしい。
 同じく扁形動物の条虫類では、日本海裂頭条虫、すなわちサナダムシが有名だ。サクラマス、カラフトマス、サケに寄生し、サケではとくにトキシラズに多いという。魚に寄生している段階では幼虫で、人体に入り成虫になる。以前、釣り好きでサケマス類を食べるのが大好きな美人女性から、お腹にサナダムシを飼ってしまったと聞き驚いた。虫下しを飲んでから、病院でお尻をむき出しにして引っ張り出してもらったら、数メートルもあったという。サクラマスの場合、幼虫は1〜2センチの白色ひも状で、主に背中の筋肉に入り込んでいる。生で食べる場合は、24時間以上の冷凍が必要だ。このほか、別のサナダムシには大複殖門条虫というのもいる。これは、特にイワシ類から人に感染するという。人にサナダムシが寄生しても特に自覚症状がなく、ほとんど気付かない。トイレで排便の際にたまたま肛門から出てきて、気付くケースが多いという。今は良い薬があり治療も簡単だ。サナダムシダイエットとか、虫の成長を調べるため自分を実験台にする研究者もいるそうだから、むやみに恐れる寄生虫ではないようだ。とはいっても、お腹に何メートルもある虫を飼っているというのは、やはり気色悪い。先の美女も「お嫁に行けなくなるから内緒にしてね」と言っていた。
 線虫動物では、前号でも詳しく書いたアニサキスやシュードテラノーバが有名だ。アニサキスにも数種類あり、代表選手のAnisakis simplex(A. simplexと略される)は150種以上の魚類とスルメイカに寄生する。
 顎口虫(がっこうちゅう)という寄生虫も線虫の仲間だ。中間宿主であるライギョ、ドジョウ、フナ、ナマズ、ソウギョなどに寄生した幼虫が、生食によって人の体内に入り害をもたらす。近年ではブラックバスを刺身にして食べた人が発症したという例もある。幼虫の体長は2〜3ミリ。顕微鏡による頭部の拡大写真を見たが、エイリアンに負けず劣らずのモンスターだ。恐ろしいのはその容姿ばかりでなく、体内に入ってところ構わず這い回ることだ。胃壁や腸壁を破り、身体の表面に近い部位に移動した場合、虫が這い回った跡の、いわゆるミミズ腫れを起こすので外からも分かる。幼虫は長期間生存して、臓器、脊椎、脳、眼球に侵入することもある。脳や眼球に到達した場合、脳障害や失明といった重大な症状を引き起こすこともある。治療としては、虫体を外科的に摘出することがベストとされているが、なかなか難しいようだ。薬物による治療もある。
 日本で生食をすることがなくても、東南アジアなどを旅した折に、珍しいからと、ライギョなど淡水魚の刺し身を勧められることもあるかも知れない。グルメ感覚や開放感もあってうっかり食べてしまい、後で辛い思いをしないよう気をつけてほしい。また、生食ばかりでなく、調理したまな板などを介して人体に入るケースもあるので注意が必要だ。
 鉤頭(こうとう)動物に属する鉤頭虫の1種ボルボソマも、まれに人体に寄生する。虫の吻(動物の体において、口あるいはその周辺が前方へ突出している部分)を腸菅に突っ込まれ、急性腹膜炎を起こした例がある。寄生する魚は海産魚らしいということで、まだ特定できていないところがミステリアスだ。(以下次号)

※参考文献、HP=「さかなの寄生虫を調べる」(成山道書店、長澤和也著)、「魚介類に寄生する生物」(成山道書店、長澤和也著)、「改定・魚病学概論第二版」(恒星社厚生閣、小川和夫・室賀清邦編)、「魚類寄生虫学」(恒星社厚生閣、小川和夫著)、愛知県衛生研究所生物学部医動物研究室HP、神戸大学大学院保健学研究科寄生虫学研究室HP、水産食品の寄生虫検索データベース、東京都福祉保健局「食品衛生の窓」HP
釣り魚の寄生虫について−A
日本はアニサキス症の再多発国。寄生する魚類やイカ類は150種類以上

スルメイカによく見かけるニベリン条虫という米粒みたいな寄生虫の学名は、Nybelinia surmenicolaで、後半部のsurmenicolaはスルメ(surmeni)の+ 住人(cola)という意味だ。スルメイカとは、とても馴染み深い寄生虫であり、実は「生物指標」として寄生するスルメイカや魚類の系群解明などに役立つという側面も持っている、といった話を前回書いた。
 ところで、生のスルメイカからよく出てくるこの虫は、冷凍物ではまずお目にかかることがないのはなぜかと、ふと思った。解凍したときに、この虫も生きてはいないにしろ、一緒に出てきてもよさそうなのだが、見たことがない。ニベリン条虫は、生きているうちはその多くが胃部に寄生していて、スルメイカの死後、時間の経過とともに這い出してきて動き回るという。であれば、漁獲直後に急速凍結処理すれば胃からの移動防止に有効で、スルメイカの商品価値を損なわないためにも良いのではという研究者の報告もある。冷凍物にこの虫が見受けられないのは、このためなのかも知れない。 試しに冷凍スルメイカを、スーパーで3匹買ってきて解剖してみた。皮が黒っぽくて、いかにも獲れたてを冷凍したという感じだ。なかなか見つからす゛、やはり胃の近くからようやく1匹だけ見つけた。通常は内臓部を捨ててしまうので、いたとしても気が付かないのだろう。


冷凍イカから見つけたアニサキス(左)とニベリン条虫

 さて、今回の主役はスルメイカを始め、さまざまな魚類に寄生するアニサキスについてである。人が間違って飲み込んでも大抵は排泄されるが、ときに胃や腸に取り付いて、激しい痛みや嘔吐、下痢をともなうアニサキス症を引き起こすことで知られている。解剖してみたスルメイカからも、アニサキスが1匹見つかった。アニサキスは線虫類で、日本近海のスルメイカには2種類のアニサキス(Anisakis simplexとAnisakis physeteris)が寄生する。人間に悪さをするのはsimplexが圧倒時に多い。スルメイカは中間宿主で、この段階ではまだ幼虫だ。終宿主はどちらもクジラの仲間で、胃に寄生する。研究者が捕獲されたミンククジラの胃を調べたところ、1頭から最高で約8万匹も見つかったという。しかもその大きさは鉛筆ほどもあったというから驚く。アニサキスはクジラの胃の内壁に頭を差し込んで寄生しているが、目立った病変は見られなかったという。クジラの胃は相当丈夫なのに違いない。スルメイカ以外には、サバ、サケ、マス、ニシン、イワシ、サンマ、ホッケ、タラなどに寄生する。日本では、150種類以上の魚類とイカ類から見つかったとの記録もある。特に多く見られるのは、スケトウダラのように北日本周辺の海域に生息する魚類だが、南日本で生まれたものでもスルメイカやマサバのように北日本海域に回遊する種には多く寄生する。これは、同じく中間宿主であるオキアミが北日本海域に多く、それがスルメイカや魚類の主要な餌となっているためだ。ニベリン条虫同様、アニサキスにとっても北の海は魅力的な棲みかのようだ。スルメイカに寄生するアニサキスは2〜3cmだが、以前、根室の納沙布岬で釣ったウサギアイナメを持ち帰り、さばいて煮付けにしたところ、それよりも一回り大きく丸々と太ったやつが、1匹の魚から何匹も出てきて驚いた。アニサキスは、主に内臓表面に寄生するが、このように筋肉内にも寄生する。サケやマスでは腹部の筋肉内に多く見られる。アニサキスは渦巻き状になって、肉にもぐり込んでいる。
 同じ線虫類でアニサキスより一回り大きく、人の胃に刺さり込み激しい痛みを引き起こすシュードテラノーバという寄生虫もいる。こちらも要注意だ。シュードテラノーバはマダラ、サケ、オヒョウ、ホッケ、メヌケなどに寄生しているが、アニサキスと違って動きが活発で渦巻き状にならない。主要な終宿主はアザラシだ。
 アニサキス症は1960年にオランダで最初に発見された。ドイツではアニサキスのことがテレビで報道されたところ、数カ月の魚類消費量が半分以下に落ち込んでしまったというから穏やかではない。魚を生で食べる日本のアニサキス症とシュードテラノーバ症の症例は、世界でも群を抜いており最多発国である。アニサキス症やシュードテラノーバ症は、多くは食べてから10時間以内に症状が現われる。昔は原因が分からず開腹手術も行われたが、今では内視鏡で容易に取り出すことができる。
 アニサキスは、マイナス20度で24時間以上冷凍すると死ぬ。しかし、家庭用冷蔵庫ではそれほど低温にならないから、3日ほど冷凍した方がいいという話も聞いた。逆にきちんと加熱すれば、確実に死ぬ。
 ちなみに、スルメイカの身(外套膜)に潜り込んだアニサキスは比較的見つけやすい。身の裏側から明かりに透かしたりしてよく見ると、白いチョークで1cmほど横に印を付けたようなところがある。包丁の先などの尖ったもので、そこをほじくるととぐろを巻いた状態で出てくる。
 世の中グルメ志向とあって、最近はホッケも刺身で食べる人がいる。ある漁師は「うまいらしいが、虫が怖いからホッケだけは絶対に生で食べない」と言っていた。誘惑と不安の間で気持ちが揺れる。
(以下次号)

※参考文献、HP=「さかなの寄生虫を調べる」(成山道書店、長澤和也)、「魚介類に寄生する生物」(成山道書店、長澤和也)「スルメイカにおけるニベリン条虫幼虫の寄生部位と移動」(水産総合研究センター日本海区水産研究所・平成15年度イカ類資源研究会議報告書P13−P16、若林信一)、「食品衛生の窓」(東京都福祉保健局HP)
釣り魚の寄生虫について−@
米粒みたいなニベリン条虫は道産子でイカに乗って旅をする

キャッチ&イート派の私は、昔から釣り魚やイカの寄生虫が気になり、文献を漁ったり、研究者に聞いたりしてきた。よく見かけるのは、スルメイカに付いている白い米粒のような寄生虫だ。これはサナダムシの仲間の、ニベリン条虫(扁形動物門・条虫綱・四吻目)という寄生虫の幼虫(プレロセルコイド幼虫)である。学名はNybelinia surmenicolaで、後半部はsurmeni(スルメの)+ cola(住人)ということだそうだ。それぐらいスルメイカとは縁が深い寄生虫なのだ。鮮魚を扱う業者間では、「シラミ」と呼ばれたりもする。 先日、スーパーで買い求めたスルメイカからも1パイから何匹も出てきた。スルメイカが漁獲されて死ぬと、寄生している場所から出てきて、ウニョウニョと這い回るから比較的見つけやすいが、中には表皮の下にもぐりこんでいるやつや、取ろうとすると、けっこうな力で肉に食いついているやつもいる。頭に4本の吻(ふん=触覚のような頭部の突出した部分)を持っていて、この吻には、らせん状に鉤(かぎ)が巻き付いている。鉤の形はバラの花のトゲに似ていて、これで肉にくっついているのだ。
 イカが生きている時は、主に胃に寄生しているが死後、他の部位に移動するという。それが消費者の目にとまり、品物が良くないのではといった苦情の原因にもなるようだ。ニベリン条虫はスケソウダラやニシンにもいる。1、2匹ならまだしも、魚屋で売られていた生タラコにびっしりと付いているのを見たときには、さすがに気持ち悪くて、苦情を言いたくなるのも理解できる。
 このニベリン条虫は、食物連鎖によって、最初はオキアミ、次にスルメイカや魚類、そして最終的にはネズミザメへと宿主を替える。スルメイカは中間宿主というわけである。スルメイカは寿命が1年しかない。春に九州の近海で生まれ、餌を求めて日本海を北上する。この間にニベリン条虫が寄生する。ニベリン条虫は、北部北太平洋、北部日本海、オホーツク海、ベーリング海などの北の海が好きらしく、北海道の周辺にも多いそうだ。ここでニベリン条虫が寄生したスルメイカは、秋に今度は南下して九州に戻り、冬に産卵して一生を終える。そのため、冬から春にかけては、ニベリン条虫もあまり見かけなくなる。夏もまだ少なく、秋から冬にかけて増加するのだ。 言い換えれば、ニベリン条虫が寄生していることで、ああこのイカは北海道に旅をしたんだなということが分かる。寄生虫は気持ち悪くて、何の役にも立たないどころか、時には人間にも寄生して悪さをする嫌われ者と思われがちだが、実は魚類の生態を解明する上で、「生物指標」と呼ばれる重要な役割を担っている場合もある。それを専門的に研究している学者もいるほどだ。
 ニベリン幼虫のうちは5ミリから1センチぐらいと小さいが、最終宿主のネズミザメの中の成虫は、大きいものでは体長7センチほどにもなる。寄生していても、魚に対する病害性は低いとされる。人間にたいしても同様で、水産試験場から聞いた話では、間違って食べても害はないそうだ。ただし、気付かずに生食した人間の口腔内や咽頭の粘膜に、吻でくっつき激しい異物感や疼痛を引き起こしたり、胃にも付着して下痢を起こしたとの症例も報告されているので、ニベリン条虫ばかり集めて茶碗一杯食べるというような行為は慎むべきだろう(しないとは思うが)。
 魚離れが進んでいるが、寄生虫の存在がそれを加速させるという側面もあると思う。害はなくても、初めて見たら、それだけで敬遠してしまうかもしれない。生き物には、寄生虫は付き物だということを知り、正しく向き合うことが重要だ。寿司店だって、いちいち客に言ったりしないが、ニベリン条虫はもちろん、スルメイカのもう1つの有名寄生虫であるアニサキスを、事前にきちんと掃除して、刺身にしたり握ったりしているのである。そういう話をすると、知らなかったと驚く人も、けっこういるのである。核家族により、こうした当たり前の知識が伝わらなくなったことも、魚離れの一因だろう。(以下次号)


※参考文献、HP=「さかなの寄生虫を調べる」(成山道書店、長澤和也)、「ニベリン条虫の成虫と生活史について」(日本水産学会誌1975年41号P823−P830、嶋津 武)、「スルメイカにおけるニベリン条虫幼虫の寄生部位と移動」(水産総合研究センター日本海区水産研究所・平成15年度イカ類資源研究会議報告書P13−P16、若林信一)、「口腔内に見出されたニベリン条虫幼虫の1例」(九州大学医学部保健学科紀要2003年第2号P91−94、宮原道明、藤原淳)、水産食品の寄生虫検索データベース

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